2019.4.10
TALK

水野良樹×吉岡聖恵 Part 3
リーダーが飛び出してくれることで私たちも飛び出していける

Prologue from Yoshiki Mizuno

HIROBAを立ち上げるにあたり、
あらためて話をするべきだと思った相手が、吉岡聖恵でした。

いきものがかりのメンバーとして
彼女とは10代の多感な頃から、一緒に歩いてきました。
僕と山下という、ふたりのソングライターが
吉岡という、ひとりのシンガーと出会い
いきものがかりの物語は始まりました。

家族でもないし、かといって仕事仲間と言い切れてしまうほど冷めてもいない。
僕にとって一番近い“他者”がメンバーであるのかもしれません。

20年経ってその存在について、お互いどう思っているのか。
歌うことの理由。そして喜び。
新しい日々に飛び込んでいく自分たちについて。

一緒に考えてみました。

Part 3 リーダーが飛び出してくれることで私たちも飛び出していける

水野HIROBAだったり、楽曲提供だったりを通して、今、俺が外に出て行こうとしていることは、聖恵からどう見えていて、聖恵自身は何を考えているのかを聞いてみたいなと思っているんですが…。

吉岡えー…めっちゃ、働いてるなって…(笑)。

水野ははは(笑)、それは間違いない!

吉岡何を見ているというか、忙しいときのリーダーの目の下のクマを見ている(笑)。

水野あははは(爆笑)。

吉岡そこに曲のタネがあるのかしら。

水野タネはないわ!

吉岡とにかく、リーダーって欲望に忠実な人だなって思ったの。

水野ああ、そうですか。

吉岡いろいろと人に気は遣ったり、バランスを取ろうとするんだけど、最後には「やっぱり俺はやるんだ!」っていう性格だから。

水野面倒くさいね。

吉岡本当に行動力があるし。

水野おお。ほめられた。

吉岡自分の興味がある方向にバーッと走っていく姿はすごく刺激になる。やっぱり3人グループで、そこを飛び出すとファンの人もビックリするじゃない。でも、リーダーが飛び出してくれることで私たちも飛び出していけるし。

水野いやぁ、非常にきれいに言っていただいて、ありがとうございます。

吉岡例えば「あの人のレコーディングの風景って、いきものがかりとちょっと違っててさ」とか、そういう話を教えてくれるじゃない。

水野やっぱり自分のホームグラウンドのいきものがかりに、持って帰りたい気持ちがあるんだよね。いろんなシンガーの方に会って、歌入れに対する姿勢も全然違うわけ。あえて練習してこないでその場でセッション的につくりたいっていう人もいれば、丁寧に組み立ててきて、一発目で「完璧です」という人もいて。

吉岡うん、うん。

水野人によって全然違うんだなと。しかも、経験のあるシンガーの方たちだから、実はその方々も、いろんな変遷を経てそこに至っているんだってことを雑談のなかで教えてくれたりするんだよね。

吉岡そうだよね、変わっていってるんだよね。

水野そうそう。そういう話を聞いて「すごいな」って思うんだけれど、俺はシンガーとしての経験がないから理解に限界がある。同じ情報をシンガーの聖恵が聞いたら全然違うことが分かるんだろうなって思って。それで伝えているんだよね。

吉岡ああ、そっか。

水野NOKKOさんや(石川)さゆりさんとかね。ちょっとした言葉に、本当に重みがあって。

吉岡素晴らしいよね。そういうことをリーダーから教えてもらえるのが、本当にうれしいんだよね。

水野自分で曲を書こうとは思わないの?

吉岡いやぁ…。

水野もちろん、いきものがかりで何曲かは書いているけど聖恵のなかでは、それは主軸ではないじゃない。

吉岡うん、うん。
思うことはあるし、書きたいと思えば書けばいいんだけど、でも、いきものがかりでやるときは「歌うべきものが、そこにある」というか。やっぱり、いきものがかりはすごく外に向かったグループだから、世間の今に対して、いきものがかりをぶつけて歌詞や曲をつくるし。リーダーやホッチは世の中をいろんな角度で見ているから、そういう人が書いたものとのマッチングがいいんだよね。

水野そうか、そうなのかぁ。

吉岡うん。

水野やっぱり表現する人って自我があるというか、「私はこう思っているんだ」って言いたがるじゃない。

吉岡はいはいはい。

水野でも、聖恵って強い個性があるにも関わらず、向かっていくのは何なんだろうと思うんだよ。

吉岡それは、人が書いたものに向かっていくということ?

水野そうそう。「自分を見て!」ていう感じには100%ならないというか。

吉岡ああ、それは自分を見てもらうより、歌を聴いてもらった方が…たぶん、大きなリアクションをもらえるっていう不思議な…そういう仕組みになっているのかな。これは、いいとか悪いとかじゃなくて。

水野ああ。

吉岡私が自己主張するよりも、主張のある歌を歌った方がその意味やメッセージが響くというか。

水野ああ。なるほどね。それは聖恵にとっては幸せなことなの?

吉岡うーん、ひとりで歌うのは趣味でもできるじゃない?でも、誰かがつくった曲に向き合ったり、自分の声が世間に少しでも届いていったりすることって、とても希有なことだと思うんだよね。

水野うん、それはそうだ。

吉岡だから、ひとりではできないことに夢中になっちゃうところがあるんだよね。気づいたらそういう世界にいるという方が近いかな。

水野ああ、すごいね。そうか。
俺は「曲をつくる理由は何ですか?」って聞かれたときに、「自分の限界を超えられるから」って言うんだけどさ。俺のことは嫌いでも「ありがとう」は好きになってくれる人もきっといるわけじゃない。

吉岡うん。

水野俺が物理的に出会えない人にも、曲は出会っていくから。曲の方が多くの人に愛されたり、つながることができる可能性がある。だから曲をつくっているんだと、頭のなかではそう理解しているんだけど。

今、聖恵が言ったように、自分自身を出すよりも曲の方が多くの人に褒めてもらえるというか。結局、同じような構図のなかにメンバー3人ともいるんだろうな…こういうことをメンバー同士で話したことはないけど。

吉岡いや、不思議よね。

水野不思議だよね。話してもいないのに、同じように思っているというのが。

吉岡やっぱり誰かと一緒に作業して、それがまた誰かに伝わることに喜びを感じるという。

水野うれしいよね。やっぱり、そういうことなのかな。いやぁ、面白いね。

吉岡ねぇ。

(つづきます)

 

吉岡聖恵(よしおか・きよえ)
1984年生まれ。
いきものがかりのボーカル。
確かな歌唱力とあたたかみのある歌声は、
老若男女問わず幅広い世代から支持されている。
2018年10月に初のソロ作品として
カバーアルバム「うたいろ」をリリース。
吉岡聖恵オフィシャルサイト

Photo/Kayoko Yamamoto
Text/Go Tatsuwa
Hair & Make/Ryosuke Hasegawa
Styling/Masaaki Mitsuzono

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