2019.4.11
TALK

水野良樹×吉岡聖恵 Part 4
「広場」のような吉岡聖恵の存在

Prologue from Yoshiki Mizuno

HIROBAを立ち上げるにあたり、
あらためて話をするべきだと思った相手が、吉岡聖恵でした。

いきものがかりのメンバーとして
彼女とは10代の多感な頃から、一緒に歩いてきました。
僕と山下という、ふたりのソングライターが
吉岡という、ひとりのシンガーと出会い
いきものがかりの物語は始まりました。

家族でもないし、かといって仕事仲間と言い切れてしまうほど冷めてもいない。
僕にとって一番近い“他者”がメンバーであるのかもしれません。

20年経ってその存在について、お互いどう思っているのか。
歌うことの理由。そして喜び。
新しい日々に飛び込んでいく自分たちについて。

一緒に考えてみました。

Part 4 「広場」のような吉岡聖恵の存在

水野変な言い方だけど、聖恵さんみたいな存在が…思わず「さん」って付けちゃいましたけど(笑)。
聖恵がもはや「広場」のようだというか。いつも思うんだけど、人に愛されるじゃないですか、あなたは。

吉岡やだ…恥ずかしい(笑)。

水野恥ずかしいですよね(笑)。僕も照れますけれど。でも、すごいと思うんですよ!あまりに近くにいるから普段は言えないけど。愛されるというと…ちょっと大げさかもしれないけど「好かれる」というか。これは本当にすごいことですよ。

吉岡いやいや。

水野ちょっとした…。

吉岡ちょっとした…広場?(笑)

水野うん、広場、なんですよね。みんなが集まってくる。あなたのもとに。
やっぱり自分としては曲を書いたら、それが聖恵の声に染まっていくというか、そのことで曲を普遍的なものにしてもらっているから。
とはいえ、あなたは、ひとりの人間じゃないですか。吉岡聖恵という人格を持った人間で。

吉岡は、はい。

水野あなたは、何なんだろうね?

吉岡えっと、あっちの星から来た…。

水野ははは(笑)。

吉岡自分でも…あのね…分からなくなっていて。

水野分からない?

吉岡リーダーやほっちのつくった曲が、私の体を抜けて出ていったものを聴いてもらうわけじゃないですか。

水野そうだね。

吉岡不思議だなぁって。

水野でも、あなたを通らないと、成り立たないないんですよ。

吉岡そうなんだよね。

水野だから、聖恵の存在は不可欠なんだよ。

吉岡何なんだろう?

水野俺、技術はすごく大事だと思うのね。98%くらいは技術で決まると言ってもいいくらいで。

吉岡うんうん。

水野それで、聖恵はすごく上手いから。

吉岡あ、ありがとうございます!

水野これ、なんか、メンバーで褒めあってすごく気持ち悪い状態になっていますけれど(笑)。

聖恵の歌は、練習で培ってきたものや、たくさんの経験を経て、いろいろな変遷をたどって今のかたちになっていると思うのね。それはものすごい練習の蓄積で。でも、それだけでは説明できないところもあって。

吉岡何が起きているんだろうね?

水野分からない…。

吉岡うーん。私も分からないけれど、最近やっぱり歌が体を通っていくことが気持ちよくて。ある意味、自分のエッセンスや考え方だったり、今まで生きてきたことの全てが歌と組み合わさって、出ていっていると思うんだよね。

水野ああ。

吉岡あとは(喉という)楽器を使ってやっているという事実ね。自分の体を使っていて。

水野うん。だから、その聖恵が人生の経験を重ねて変わっていくことで、もちろん歌も変わっていくんだよね。

吉岡そうなのよ。変わってきてはいると思うね。

水野でも、それが、いきものがかりにもなるという。

吉岡水野(ふたりで声を合わせて)不思議だねぇ(笑)。

水野この対談、最終的に「不思議だねぇ」で終わるという(笑)。

吉岡でも、本当にそう思うよね。

水野思うね。

吉岡この3人での…集まりは…もう、不思議だよ。
でも、リーダーがこの前言っていた「いきものがかりのための人生というところから、人生のなかでのいきものがかりをどうするか」という方向に変わっていっているんだね、きっと。

水野そうそうそう。それ、ふたりに言ったよね。その方が結果的には、見ている人にとっても、いきものがかりが面白くなる気がするんだよね。

吉岡本当にそう思う。

水野放牧でさ、それこそ、いきものがかりを広場と例えるとすると、いったんその広場から離れたんだろうね。

吉岡そうだね。

水野なんか、その広場に立ち止まるどころか、足がそのまま根っこになって、広場に根付いちゃっていたのが、一回離れて。

吉岡そう。離れて、外から見たんだね。

水野外から見たのかな。で、また戻っても自由はあるというか。根付いているんじゃなくて、ちゃんと足は動く。広場のなかで歩ける。走れる。その感じがいいんだろうね。

吉岡そうだね。広場だから出たり入ったり、そうしたいときにしてさ。

水野そうだよね。放牧前はね、自分の気持ちがあんまり曲に入らない方がいいんじゃないか、という思いがあって。

吉岡うん。よく言ってたよね。

水野聖恵もある種、ナレーターというか、自分を出さないということを共通認識として持っていたじゃない。俺が押し付けてしまった部分もあると思うんだけれど。それはその段階では正しい手法だと思ってやっていたんだけど、やっぱり無個性じゃダメだなって思ったんだよね。

吉岡おお。それをリーダーが言うっていうのは、けっこう大きなことだね。

水野聖恵は聖恵で、俺も俺で、フィルターになっちゃって、ただそこを通ればいいみたいな感じになっちゃうと、途端に愛されないというか。これはなぜだか分からないんだけど、やっぱり何か名前と顔を持っていなきゃいけないというか。

吉岡でも、もとからあるじゃない、リーダーは。
自我もあるし、思いもあるし、曲で言っていないとしても世間に言いたいこともいっぱいあるし。

水野うん。

吉岡だから、それがいい塩梅で出していける時期になってきたんじゃない?

水野ああ、そうか。バランスが取れるようになってきたのかな?

吉岡うーん…知らん!

水野知らんのかい!ははは(笑)。急に突き放すな!

吉岡なんかさ、アニメのキャラクターでも自分の持っているパワーを、最初はコントロールできなくて、バーッ!って出ちゃうじゃない。

水野ああ、それ分かりやすいね。

吉岡出し方を練習しないと、技を使いこなせないことってあるじゃない。

水野なるほどね。

吉岡自分で散々出し方を調整してきたけど、自分の思いとか個性とかを、うまく出せるようになってきているんじゃない。

水野そうか。特に最近レコーディングしている曲は自分の気持ちも入っているけど、「聖恵がこれを歌ったら、聖恵の気持ちもリンクするんじゃないかな」って思ったんだよね。

吉岡そう、私の気持ちも入ってるのよ、書いてきてくれた段階で。

水野うん。そうそう。

吉岡だから、「WE DO」でも、「本当はね いつだって 私たちが主役なんです」って歌詞があるじゃない。

水野はいはい。

吉岡もちろん今までのいきものがかりだったら「一人一人が」とか「聴いてくれる方たちが」って言っていたんだけれど、でも、心のどこかで「私たちも主役」っていう思いもあって。

水野そうだね。

吉岡そこはすごく新しくて、だからリーダーがハッキリと自分の気持ちも入っているって言ってくれていることが、すごくうれしいです。

水野はい。そこがさ、「NEWTRAL」のときとはまた違っていて。でも変化しているにも関わらず、わりと同じところに俺も聖恵もいるという。

吉岡そうだね。

水野これはね…。

吉岡ほっちはどうなんだろう?

水野穂尊がね…分からないのよ。吉岡さん!そこはあなたに聞いてほしいんですよ(笑)。

吉岡ほっちは変幻自在だからね。

水野あいつは何なんだ(笑)。

吉岡じゃ、次回はほっちで。

水野でも、意外にちゃんと話すと照れるじゃない。

吉岡いや、ほっちと話しているときのリーダーがいちばん幸せそう!

水野ははは(笑)。

吉岡好きなんだなって思う。

水野あまりにも違うじゃない。

吉岡ん、何が?

水野俺とあいつの人間性はさ。

吉岡リーダーのほっち愛はね…すごいですよね。

水野愛憎渦巻いているんじゃないですか。

吉岡そう、ライバルであり、やっぱり認めているしね。HIROBA TALKに来てもらった方がいいと思う。

水野そうですね。いつか俺の覚悟ができたら。

吉岡(モジモジする水野を見て)クネクネするな!

水野ははは(笑)。

吉岡その対談、見てみたい(笑)。

水野最後になるけど、これから、どういうふうになっていきたいですか?いきものがかりだけではなく、自分の人生であったり、シンガーとしても。

吉岡えー、難しいなぁ!
でも、やっぱりいきものがかりで3人でやっているうちは曲もふたりがつくってきてくれるし、目の前にあるものに対して自分が向かっていくということが多くて。でも、リーダーにも刺激を受けて、ソロアルバムも出しましたけど、またソロ活動なども、これから。

水野ぜひ!

吉岡具体的には何も決まってなくて、どうしようかなと考えている程度ですけど。

水野うん。

吉岡3人がそれぞれ面白いことをやっていけば、いきものがかりも自然と面白いことになっていくと思う。

水野聖恵が変化するということは、俺も変化するということだからね。聖恵の変化は、そのまま俺の変化に直結するから。

吉岡そうだね。

水野聖恵だけじゃなく、穂尊もそうだし。やっぱり、どこか半分つながっているから。他人であって、他人じゃない。

吉岡本当にそうだよね。

水野だから「どんどんやりなよ!」って言うのは、その変化がこっちにも来るから、それが楽しみなんだよね。

吉岡そうか!リーダーは人にも言っているけど、自分に対して言っている部分もあるのか。

水野そうなんだよ。だからソロも。いつかオリジナルも。

吉岡うん。

水野back numberってバンドに清水依与吏っていうのがいるんだけど、彼に書いてもらって(笑)。

吉岡いや、実はこの前、やるとしたら書いてくれる?って聞いたの。

水野おお。じゃあ、これを公に出して圧力をかけるという(笑)。

吉岡ぜひ、この対談を依与吏さんに見てもらって(笑)。でも、この人に書いてほしいなって思う人を何人か想像したりはしているから。

水野ああ、いいね!

吉岡そう。

水野今度は聖恵とその人のやり取りの中で「こういうことがあったんだよ」っていうのをフィードバックしてもらえたら、お互いにいい変化があると思う。

吉岡面白いグループになっちゃうね。

水野なると思うんだよね。いやいや、いろいろ聞かせてもらいました。というわけで、今日は本当にありがとうございました。

吉岡ありがとうございました!楽しくて、すごいしゃべっちゃった(笑)。

(おわり)

吉岡聖恵(よしおか・きよえ)
1984年生まれ。
いきものがかりのボーカル。
確かな歌唱力とあたたかみのある歌声は、
老若男女問わず幅広い世代から支持されている。
2018年10月に初のソロ作品として
カバーアルバム「うたいろ」をリリース。
吉岡聖恵オフィシャルサイト

Photo/Kayoko Yamamoto
Text/Go Tatsuwa
Hair & Make/Ryosuke Hasegawa
Styling/Masaaki Mitsuzono

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