2019.4.22
TALK

水野良樹×高橋久美子 Part 1
やっぱりこの3人はそれぞれ意志を通していくんだ

Prologue from Yoshiki Mizuno

いきものがかりのメンバーとして歌詞を書くこと。
他者への楽曲提供で、グループから離れて
ひとりのソングライターとして歌詞を書くこと。
そのふたつの違いについて考えたときに、
話を聞いてみたいと思ったのが、高橋久美子さんでした。

同世代の作詞家としてチャットモンチー在籍時から交流があった高橋さんとは、
2018年に大原櫻子さんのアルバム収録曲「夏のおいしいところだけ」で
一緒に曲をつくらせてもらいました。
そのときに感じた、彼女にしか書けない言葉の数々。

他者に届けること、
そして自分の書いた言葉と自分自身の距離について、
このHIROBAで、彼女と会話をしてみました。

Part 1 やっぱりこの3人はそれぞれ意志を通していくんだ

水野今日はHIROBA TALKにお越しいただき、ありがとうございます。

高橋こちらこそ、ありがとうございます。

水野HIROBAというのを始めたのね。いきものがかりは仲間たちとつくりあげていくもので、それはそれとしてあって。もう少し自分自身という個人に近いところで音楽をつくってみたいなとか、グループの外側にいる人たちに話を聞いてみたいなとか。そういうことがなかなかできなかったから。

高橋ああ、そうよね。

水野いろんな人と曲づくりをさせてもらったり、お話を聞いたりとかする場所が欲しいなと思って、それでこういう場を立ち上げて。

高橋遊び場っぽいのね。

水野そうそう。

高橋公園というか、みんなが空き地で集まっているみたいな感じを思い出して。

水野うん、そうそう、そんな感じ。「考えること」「つくること」をフランクに楽しむ場所というイメージなんだよね。

高橋ああ、なるほどね。

水野それで、今日は久美子ちゃんにお話を聞きたいなと思いまして。

高橋ありがとうございます。HIROBAに呼んでくれて、うれしいです。

水野こちらこそ出てくれて、ありがとうございます。いちばん最初の出会いはチャットモンチーのメンバーだった頃。

高橋ああ、そうだったね。

水野一回だけ、いきものがかりとチャットモンチーでみんなで一緒に食事に行ったじゃないですか。ちゃんと話をしたのはあれが最初だったよね。

高橋そうそう、覚えてるよ。

水野でも、それ以外は意外とつながりはなかったよね。

高橋うん、フェスとかで何度か一緒になった記憶はあるけど、ジャンルがばっちり合うってわけでもないから、出るフェスも違っていたからね。

水野僕らの印象としては、いきものがかりがデビューする1年くらい前に、チャットモンチーがデビューしていて。

高橋そうね。ちょっとだけチャットのほうが先なのよね。

水野同世代のチャットモンチーという新人がデビューして。音楽雑誌の表紙をいくつも飾ってるぞ!なんだよ、羨ましいな!って(笑)。

高橋あ、そうか。そうだったっけ?

水野うん。それが印象としてあって背中を追っているような感じだったんだよね。

高橋本当!?

水野そうそう。すげぇなって。まだそのときはうちらは地元にいたからさ。

高橋私たちはタワーレコードとかに挨拶に行くときに、渋谷のスクランブル交差点のモニターに「SAKURA」を歌っているいきものがかりが映っているのを見て、「これ、誰や!?」って3人で話してて。

水野ははは。そうなんだ。

高橋Tシャツ着てたよね?

水野着てた、着てた!あの頃は吉岡が必ず黄色のTシャツを着てたんだよ。

高橋「Tシャツで歌っとるぞ〜」って言ったりね。

水野ははは(笑)。最初はどんな印象でした?

高橋なんか大学からポーンと飛び出してきたみたいな子たちだなって思ったよ。「つくられていない感じ」がしたんよね。

水野ああ。

高橋そういうところがチャットと少し似ているなと思ったよ。

水野はいはい。

高橋デビューの頃って、大人たちの関わり方とか不安もあるじゃない。

水野うん。

高橋そこが、すごくのびのびとやれているのかなと思ったんだよね。チャットもそうだったし。

水野そうなんだ。チャットはのびのびとやってた?

高橋やってたね。

水野ああ、そう!

高橋うん、わりとね。

水野お互い3人組だったこともあって、ジャンルは違うけど意識していた部分があって。

高橋うん、うん。

水野一緒に食事をしたときに面白かったのは…思っていたよりも3人がとがってたんだよね。

高橋うわぁー。それ、みんなに言われるのよー!

水野ははは。なんか、ごめん。もっと柔らかい感じかなと思っていたら、ちゃんと核を持っていて「私たちはこういうことがやりたい」とか、はっきり意見を持っていて。

高橋ああ、そうね。

水野むしろ、うちらのほうが、周りの意見に合わせてきたという意識も強かったから。

高橋そうだ。そういう話、したね。

水野そうそう。

高橋そのとき、水野くんは「君たちは全員が楽器を持って、3人だけで音を鳴らしていることがすごくかっこいいと思っている」って言ってくれて。

水野うん。

高橋「自分たちも本当はもっととがりたいんだけど、とがれないんだよ」っていう話もしてくれて、意外だなって思ったんだよね。

水野ええ。

高橋そんなこと思ってるんだ、すごく楽しそうにやっているように見えるのにって。

水野ははは。楽しいは楽しいんだけどね。あのときのチャットの3人のストイックさというか、「自分たちでつくってるんだ」っていうことへの自負というか。

高橋あったね。それはものすごくあったね。大人の人と対立することがたくさんあって、でも、ほぼ自分たちの思うように進んできたというのは、やっぱり戦って納得のいくように話し合ってきた結果で。

水野ああ、そうなんだね。

高橋鵜呑みにして「分かりました」ということは、ほとんどなかったような気がする。戦って負けるようなことはあったけど。例えば、どっちの曲をシングルで出すか、とかね。

水野はいはいはい。そういう話を聞いて「自分たちは自立できているかな」って気持ちが当時はすごくあったから、この3人はすごいなと。印象深く覚えているんだよね。

高橋そうなんだね。

水野そのあと、久美子ちゃんがチャットモンチーをやめることになって。

高橋うん。

水野新しいことを始める、文章や言葉の世界に行くということを聞いて。それで残るメンバーも2人でチャットモンチーを続けると。「ああ、やっぱりこの3人はそれぞれに意志を通していくんだな」って。

高橋ああ、そうね。

水野ひとりで出ていくときの…もちろん残る方もなんだけど、覚悟が必要じゃない。

高橋そうね。

水野それぞれの道を、意志をもって選んでいく人たちのすごさを感じたんだよね。あれは久美子ちゃんが脱退する前の、なにかのイベントライブだったかな。3人では武道館で演奏するのが最後になるっていうステージを、いきものがかり全員で見に行ったんだよ。

高橋えー!来てれくれてたんや。

水野そのときの3人がすごく前向きに見えたの。久美子ちゃんは脱退するんだけれど、3人とも前向きで。それが印象深くて。

高橋そうなんやね。

水野そのときはまだ歌詞を書いてもらって一緒に曲をつくるとか、久美子ちゃんと関わっていくということは想像できていなかったんだけれど。そのあと、出版した本を送ってくれたりして。自分のほうもひとりの活動というのを考えていくようになっていったから。

高橋うん、うん。

水野それで何年越しかの告白みたいになっちゃって恥ずかしいんだけど、いつか一緒につくってみたいなと思っていたんだよね。

高橋わー!

水野だから今、何作かご一緒できて、素直にうれしいです。

高橋いやいや、こちらこそ。

水野本題に入るんだけど、文章の世界には最初から憧れがあったの?もともと自分のいる場所は文章の方だという思いだったのかな?

高橋うーん、そうね。中学生のときから詞を書いていて、友だちもあまりいなくて、詞に助けられている部分もあって。

水野ああ。

高橋音楽の世界に入って「歌詞を書いてみる?」って言われて、「じゃあ、書く」となって。自分の書いた歌詞が曲になるっていうことがうれしかったし、楽しかったし。

水野うん、うん。

高橋ただ、3人でできることと、ひとりでできることって違っていてね。

水野はいはい。

高橋だんだん、ひとりの方の分量が大きくなっていったのかなって思う。というのと…ずっと全速力で走り続けるでしょ。

水野そうだよね。

高橋いきものがかりはパタって休止したじゃない。それはすごい選択だなと思ったんよね。

水野ははは。

高橋私はそういうふうにはできなくて、チャット自体も休むということができない人たちやから。走り続けて、私は「休むね」ではなく「やめるね」になったんよね。

水野ああ、そういうことか。

高橋やっぱり…疲れもあったとは思う。単純に。

水野なるほどね。グループって難しくて、いつも同じ速度で全員が走れるわけじゃないというか。

高橋そうね。

水野ある瞬間はこの人が先頭を走って、またある瞬間は別の人が先頭を走って…って。時期によって違うじゃない?

高橋そう!誰が引っ張るかによっても、変わったりするもんね。

水野そのバランスっていうのはすごく難しい。

高橋そうねぇ。休むことで変わることもきっとあると思うんだけど、そっちはどうだった?

水野グループでいうと放牧して3人の距離感は変わったかな。戻ったというか。3人全員が全速力で走っているときってさ、お互いのことを引っ張る余裕がないんだよね。自分の持ち場をしっかり頑張ることに集中しちゃうというか。うちの場合は3人とも気を遣うタイプだから「とにかくメンバーに迷惑かけちゃいけない」みたいな緊張感がお互いにあって。

高橋そうか、そうか。

水野それがあんまり良くないなみたいなのはあったんだよね。でも、放牧を決めたことによって力が抜けて、高校生のときに戻っていくような感じというか。

高橋ああ。

水野高校生のときはリハが終わったら3人でラーメンを食べに行くとかさ。自然に会っていたのに、3人で会うことがなぜか特別なことになってしまっていたから。

高橋うーん、そうかぁ。

水野3人で会うとなったら、まわりが「大丈夫か!?」みたいな(笑)。なんか大事なことでも話し合うんじゃないかって。放牧中はそういった緊張感も軽減されて、家に遊びに来たりとか、「今、何してるの?」ってたわいもない話をしたりね。

高橋そっか。それまでは3人で会うってことがなかったんやね。

水野なかったね。

高橋曲つくったりとかは3人でやるじゃない?

水野いきものがかりの場合は特殊で、詞曲はひとりでつくるからさ。チャットの場合は3人で一緒にやるじゃない。

高橋そっか。

水野ソングライターとシンガーが一緒のグループにいるんだけれど、それぞれはひとりで完結しているというか。

高橋なるほど。一曲完成させてから、みんなに渡すということ?

水野そうそう。

高橋それで、みんなから異論が出たりしないの?

水野しないの!

高橋しないのか!

水野異論は出さないという文化なの。

高橋うわー!

水野お互いを尊重するから。

高橋アレンジまでひとりで決めるの?

水野アレンジの方向性は3人で相談するんだけれど、俺の歌詞とかメロディについて他のメンバーがダメ出しをするということは、ほぼゼロなんだよね。逆もない。山下にダメ出しとかしない。

高橋ああ、それはチャットもないわ。歌詞とメロディに関しては。

水野あっ、そうなの?

高橋まったくない。

水野でも、そこから先は3人でディスカッションしていくでしょ?

高橋それは、そう。恐ろしいくらいにディスカッションしていくね。

水野そうなると自分の手から離れていく感じで。

高橋そうよね。曲もガラッと変わるよね、アレンジで。

水野そうそうそう。そこは、バンドだもんね。うちは純粋なバンドって感じじゃなくて、ソングライターとシンガーっていう構図のほうが強いから。

高橋ふーん。それが高校生のときみたいに集まって、終わったらご飯食べてってなったのね。

水野そうだね。

高橋めちゃくちゃ健康やね。

水野ははは。健康なのかな。

高橋健康でしょ、それは(笑)。

(つづきます)

高橋久美子(たかはし・くみこ)
1982年生まれ。作家・作詞家。
2004年、チャットモンチーに
ドラム、作詞家として加入。
2011年、チャットモンチーを脱退。
以降、アーティストへの歌詞提供や、
エッセイ集の出版など、精力的に活動。
2019年4月から、
さまざまなアーティストの“歌詞”に
スポットを当てる音楽番組「うたことば」
(NHKラジオ第1/毎週日曜午後1:05)の
MCを務めている。
高橋久美子オフィシャルサイト
高橋久美子Twitter

Photo/Kayoko Yamamoto
Text/Go Tatsuwa
Hair & Make/Yumiko Sano
Styling/Miwa Nakayama

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