2019.5.14
TALK

HIROBA Part 2
僕たちが挑戦していかないと今からスタートする若い人たちは挑戦できない

HIROBAの立ち上げから約1カ月半が経過。
本人による楽曲制作の過程を振り返る原稿や、
さまざまなクリエイター、ミュージシャンとの対談、
制作スタッフのインタビューなどを通して、
少しずつその輪郭が見えてきたが、
このタイミングであらためて「HIROBAとは何なのか」ということを
分かりやすく説明する必要があるのではないだろうか。

HIROBAとしては初となる水野良樹のインタビューというかたちで、
理解を深める全5回の短期連載。
第2回は、既存のスタイルを解体することについて語る。

Part 2 僕たちが挑戦していかないと今からスタートする若い人たちは挑戦できない

──以前、雑談のなかで「他のアーティストや若い世代がHIROBAと同じような試みをしてくれたら」とおっしゃっていましたが、詳しく伺えますか?
水野日本国内の音楽エンタメの世界って1990年代後半から2000年代前半にかけて、ビジネス的にも非常に世の中にフィットして、映画やドラマの主題歌だったりCMソングだったりと、主要な娯楽やメディアコンテンツにJ-POPが絡んでいって、それが全部うまくいって、社会への影響度の面でも、権利収入の回収の面でも、ほぼ完璧なフォーマットができたんですよね。そこでお金がたくさん生まれることによって、新人だったり新たな才能だったりが発掘されて育成されたという良い循環があったのは確かで、それを否定する必要はまったくなくて。

ただ、その当時のフォーマットを今に当てはめるのは無理があるんですよね。テレビやラジオとの関わり方のフォーマットが用意されていて、その出方も準備されていて、そこにみんな疑問を抱かず、変えようとすることもなくて。アーティスト側も不満を持っていたとしても、言えるような立場の人だけではないし、パワーバランスのなかでみんな生きているから。もちろんみんな意地もあって「なんでだよ!」って言いたいこともあるけど、それを表に出せるタイプの人たちばかりでもないし、出すことを良しとしない人も多くいるから、なんか不健全だなと思うことが少なくないんですよね。そうなったときに、もうちょっといいやり方があるんじゃないかと。

僕は、仮にこのプロジェクトが失敗したとして、自分でリスクを取っていますといっても、いきなり生活できなくなったり、何かが壊れるというところまでのリスクは取っていないんですよね。それは少し前の世代の、既存の音楽業界のシステムがまだかろうじて機能しているときに運良くデビューして名前を知っていただけて、同世代に比べたら大きな額のお金をいただける機会をたまたま得て、生活ができているからこそ、できる挑戦であって。でも、僕たちが挑戦していかないと、今からスタートする若い人たちはそんな大きなリスクをとる挑戦はできないじゃないですか。僕が挑戦したり失敗したりして何かやってきたことが良くも悪くもひとつの前例となって、もっと受け手にダイレクトに届けたいと思っている人たちに「あいつ、あんな失敗してたよ。俺はもっとうまくできる」とでも思ってもらって、実際に届けられるようになっていったらいいなというように思います。

──HIROBAはソロプロジェクトと言われることが多いと思うんですが、そうではないことを分かりやすく説明していただけますか?
水野そうですね、その説明は難しいことではあるんですが…。僕の場合は自分で詞曲を書いて自分で歌う作品もあると。そうすると「それはソロプロジェクトですよね」ってなるんですよね。でも、例えばThe Chainsmokersみたいにソングライターとプロデュースワークをする人がいて歌い手がいるといった、いろんなスタイルがあるのは当たり前だし。今、シンガーソングライターという言葉で表現されるスタイルじゃなきゃいけないことはないですよね。それだけがクリエイティブで、それだけがアーティストというわけじゃなくて。それはすごく当たり前のことなのに、既存のシステムで成功した、自分の言葉を自分で歌うスタイルのかたちはこういう名前なんだみたいなことが日本のお茶の間では定着しすぎてしまっていて、バンドとはこういうもの、アーティストとはこういうもの、シンガーとはこういうものと。でも時代に応じて、作詞や作曲をする人が別にいたということはあるし、ジャンルによってもスタイルは変わるし。もっと柔軟なのに、あるグループの人がひとりでプロジェクトを始めて、しかも自分で歌ってる曲もあると「それはソロですね」という画一的な表現になって…それはちょっとつまらないですよね。

今後予定されている曲も僕がつくってはいるけれども、歌っている人は全然違うとか、歌う人もコラボというかたちではなく、例えば公募にしてみるとか、今までのスタイルをアレンジしていくというか、ゆるやかに解体していくようなことをしていきたいんですよね。水野良樹が何かエンタメをするときは、“水野良樹専用フォーマット”を自分でつくると。僕は原稿を書くことが好きだし、違う分野の方と話をすることも好きだと。そういった表現方法があるから、今のHIROBAはこうなっているだけで、例えば音楽をやっているけれど映像をつくることがものすごく好きだという人は、映像で表現したらいいと思うんです。それぞれのフォーマットを持てばいいはずなのに、「音楽アーティストとはこういうフォーマットであるべきだ」みたいなことが、みんなが意識しないうちに浸透しすぎているという現実に違和感があるんですよね。

今はSNSで個別に発信できるので、誰でも自身のイメージ像をつくることができますよね。「自分はこういったカテゴリーで、こういう視点で見ています」というように、自由に表現されている方もたくさんいて。そういうなかで、エンタメの最前線にいる人たちが「アーティストとはこういうものだ」というフォーマットに乗って、そこを追い求めていることに疲弊していっていることは、時間も労力ももったいなさすぎると思うんです。

ちょっと前までは、CDという形態で音源を売るということがかなり重要な価値を占めていて、そこで利益が出ないとアーティストとしては「ヒットしていない」なんて思われてしまう風潮もあった時代があって。でも、今はそうじゃないですよね。ライブで利益を上げられる人、音楽から派生するグッズで利益を上げられる人、それぞれに自分たちの長所を生かしたフォーマットで自由に活動できるはずなのに、それがうまくできていない現状があると。なので、そこを変えていくというか、自由なやり方を試してみるということですね。

(つづきます)

Photo/Manabu Numata
Text/Go Tatsuwa
Hair & Make/Yumiko Sano

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