2019.7.30
TALK

水野良樹×Kan Sano Part 2
ポップスはどこか次への
入口になってほしい

キーボーディスト、トラックメイカー、プロデューサーとして、
独自のサウンド表現を追求し、海外でも注目を集めているKan Sanoさん。
J-WAVE「SPARK」で2週にわたってオンエアした対談の模様を
HIROBA編集版としてお届け。

Part 2 ポップスはどこか次への入口になってほしい

水野ご自身の作品をつくること以外に、いろいろな作品のプロデュースワークもされています。それぞれの考え方に、何か違いはありますか?
Kan Sanoなんでしょうね…。もともとピアニスト、キーボーディストなので、職業柄、わりと俯瞰で見ることが多いですね。
水野はいはい。
Kan Sano自分のスキルを必要としてくれている人がいれば提供したいという感じです。最近はメジャーアーティストの方々とお仕事をする機会が増えてきていますが、自分の居場所ではないなというのはどこかで思っていて。
水野そうなんですね。
Kan SanoJ-POPはもちろん好きですし、関わってはいきたいですが、自分がやる音楽はそことは離れているので、モードはけっこう違うかもしれないですね。
水野そうですよね。
Kan Sano特に今回のアルバムは、自分がやりたいことをやったという感じで、どう受け止められるかとかは考えずにやっちゃったんですよね(笑)。
水野素晴らしいと思います。
Kan Sano本当はもっとアバンギャルドな内容になる可能性もあったんですが、結果的に意外とポップな作品になったと思っていて。
水野そうですよね。
Kan Sanoそれが今の自分のバランスなのかなと思っています。
水野たしかにおっしゃる通りかもしれないです。好きなことを表現されたというなかで、僕みたいな、かなり遠い人間が「うわっ、かっこいい!」と思ったということは、ある種のポップさというか、違う趣味の人たちにも届く広さが、今のモードとして多少はあるのかなと。
Kan Sanoそうですね。このアルバムをつくっている間も、絢香さんのプロデュースやCharaさんのツアーと並行してやっていたので、そういう影響もあるのかもしれないですね。
水野ああ。これから、どうなっていくんでしょうね。
Kan Sanoいやぁ…、どうなんでしょう。
水野ハハハ。
Kan Sano5月に初めて韓国でライブをやってメチャクチャ盛り上がったんです。
水野へー!
Kan Sano僕の曲がSpotifyなんかで聴かれているみたいで。
水野すごいですよね。
Kan Sanoだから、海外にもっとアプローチしていきたいですね。
水野いやぁ、絶対にしたほうがいいですよ!僕が言うまでもないですけど。
Kan Sanoいやいや(笑)。

水野そのなかで、歌詞が日本語であったりするじゃないですか。
Kan Sanoはい。
水野あのサウンドのなかで言葉を入れるのはすごく難しいと思います。
Kan Sanoそうなんですよ。
水野しかも、ある種、言葉が楽器になるというか。発音のバランスとか、正直、日本語が全然合わないじゃないですか。
Kan Sanoそうなんですよね(苦笑)。
水野どういうところを注意されているのかなと。
Kan Sanoそれはもう、いちばん試行錯誤したところです。歌を歌ったり、歌詞を書いたりということは前作くらいから始めたので、まだ手探りでやっていますが、日本語でいきたいというのは最初から考えていました。
水野そうなんですね。
Kan Sano海外にアプローチするにしても、英語にしなくていいんじゃないかと、どこかで思っていて。
水野はい。
Kan Sanoスタッフからすると「いや、英語にしたほうがいいよ」っていうのはあると思いますが。
水野ハハハ(笑)。
Kan Sano僕は日本語でもいいんじゃないかなってずっと思っていて。普段、自分が聴いている音楽も七尾旅人さんや寺尾紗穂さんといった、日本のフォークシンガーといわれる、日本語の響きに重きを置いているような方たちなので。自分も日本語で、かつある程度聴き取れる歌い方にしたいなと思って。
水野はい。
Kan Sano僕の歌い方はかなりウィスパーなので、言葉が聴き取りづらい歌い方ではあるんですが、聴き取れるように、その塩梅を何度も録音して微調整しましたね。歌い方をいろいろ変えてみて。
水野重ねてみたりとか。
Kan Sanoそうですね。あとは、英語だと一言で短く言い切れるものが、日本語はどうしても長い文章になってしまう。
水野分かります!
Kan Sano僕のメロディって基本的には短いんです。
水野なるほど。
Kan Sanoそうなると、言葉をいっぱい詰めていくのは難しくて。短い言葉で、いかに言い切るかと。
水野日本の作詞家が、数十年にわたって苦労している点ですよね。
Kan Sanoそうですね。
水野数文字で、意味も音も合わせていかないといけない。
Kan Sanoそのスピード感みたいなものは気をつけましたね。伝わるスピードというか。
水野はいはいはい。
Kan Sanoそれが、もたつかないように。
水野理屈っぽくなっても意味がないし。
Kan Sanoそうですね。でも、なんて言うんでしょう…今回は、歌詞に関しても自分が納得いくものを書くしかないという感じだったので。正解も分からないですよね、そういう意味で。
水野ハハハ(笑)。
Kan Sanoいまだに分からないです。
水野いまだに分からないという気持ちだけは共感できます。
Kan Sanoハハハ(笑)、本当ですか!
水野やっぱり、分からないですもんね。
Kan Sano自分が好きで聴いているシンガーが、どういうように書いているのか。それはけっこう調べましたね。
水野ああ、なるほど。
Kan Sano僕はピアニストなので、ジャズピアノであればビル・エヴァンスやハービー・ハンコックがいてという、その歴史がちゃんと分かります。
水野文脈ですよね。
Kan Sanoそうです。でも、リリックに関しては、そこが何もない状態で始めてしまったので。
水野ああ、そうか。シンガーによっても違いますけどね。
Kan Sanoそうですよね。
水野僕はここ2、3年くらいで、自分のグループ以外で、楽曲提供をさせていただけるようになりました。
Kan Sanoはい。
水野演歌を背景にした方、邦楽のなかでも全然違うバックグラウンドを持った方。歌い方にしても、いきものがかりの吉岡のように滑舌よくストレートに歌うタイプのシンガーもいれば、こぶしで聴かせるシンガーもいる。そうすると合う言葉が全然変わってくるんですよね。同じ日本語でも、子音の強調具合、母音のはっきり聴こえてくる感じ、鼻濁音の印象とか。そうすると、これは複合的なものだなと思ったんです。
Kan Sanoそうですよね。
水野単純に作詞の技法だけでは解決しないのかもしれないと。
Kan Sano僕も自分の歌い方、声質がかなり特殊なので、やっぱり合う言葉、合わない言葉というのはありますね。
水野ああ、やっぱり。
Kan Sanoそれは、たしかにありますね。
水野話が戻りますけど「海外で聴いてもらうときに日本語で」ということは、僕も同感です。
Kan Sanoあ、そうですか。
水野絶対にいいと思います。
Kan Sanoそれは僕の願望も含めてなんですけどね。
水野僕は日本語のほうがユニークなものとして、ウケるのではないか、もしくは届くのではないか、と思います。
Kan Sano韓国でライブをしたときに、日本語で歌ってちゃんと届いていたので。
水野ああ、そうなんですね。
Kan Sanoやっぱり、これでいいんだと思いましたね。
水野最後になりますが、いわゆるJ-POPと呼ばれるようなものは、どのように見えていますか?
Kan Sanoうーん、そうですね。僕もそもそも出発はMr.Childrenとかなので。
水野ああ、そうなんですか!

Kan Sanoずっと10代の頃に聴いてきた音楽ですが、ポップスはどこか次への入口になってほしいと思っています。
水野はい。
Kan Sano僕の場合だと、ミスチルを聴いていて「このファンキーな音はなんだ?」と思って、調べたらクラビネットという楽器で。
水野はいはい。
Kan Sano70年代にスティーヴィー・ワンダーがよく使っていたことを知って、そこをきっかけにブラックミュージックを聴くようになりました。
水野ああ。
Kan Sanoそういう入口であってほしいと。J-POPでも、少し自分の理解を超えたものであるとか、例えるなら毒と言ってもいいし、異物であったりカウンターカルチャー精神とか、なんでもいいんですが。そういう要素が入っているものが好きですね。
水野なるほど…うーん…頑張ろう!
Kan Sanoハハハ(笑)。
水野僕、何もできていないので。
Kan Sanoいえいえ。
水野貴重なお話を聞かせていただき、しかも全然違う場所にいる方から、いろいろな視点を教えていただき、学びの多い対談になりました。
Kan Sanoこちらこそありがとうございました。
水野「SPARK HIROBA」対談企画、第2回目のゲストにKan Sanoさんにお越しいただきました。ありがとうございました。
Kan Sanoありがとうございました。大丈夫でしたか?
水野もちろんです!ああ、うれしい!!

(おわり)

Kan Sano(かん・さの)
キーボーディスト、トラックメイカー、プロデューサー。
キーボーディスト、プロデューサーとして
Chara、UA、土岐麻子、大橋トリオなど、
多数のアーティストのライブやレコーディングに参加。
また、トラックメイカーとして自身のオリジナル作品のほか、
CM曲やドラマのサウンドトラックなども制作。
今夏も多数のライブイベントへの出演が決定している。
Kan SanoオフィシャルHP
Kan Sano Twitter

Photo/Kayoko Yamamoto
Text/Go Tatsuwa
Hair & Make/Yumiko Sano

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