2019.8.7
ESSAY

関取花 連載第6回 ヌーマーイーツ

とんでもない沼に足を突っ込んでしまった。そう、Uber Eatsである。

ヌーマーイーツ

とんでもない沼に足を突っ込んでしまった。そう、Uber Eatsである。

私はもともと自炊好きな方なのだが、心に余裕がなくなるといつも途端にやらなくなってしまう。私の生活において食事というのは最もわかりやすい元気の源なので、そういう時は何かを頑張ったらその分食べたいものを食べることでご褒美を与えるようにしている。

少し前はコンビ二の新商品にハマって通いつめていたのだが、そのマイブームにも梅雨の時期に続いた連日の雨で終止符が打たれてしまった。理由はたった一つ、外に出たくなかったのである。濡れるとほら、洗濯物とか増えるし。

はてこれからどうしようか。なにせ外に出たくないとなると、選択肢は宅配ピザくらいしか思い浮かばなかった。でもさすがに一人で頼むのは気が引ける。
そんなとき、友人のインスタグラムを見ていたらこんな投稿を発見してしまった。

外に出なくても食べたい料理を家で食べることができて、しかもイケメンが届けてくれる可能性まであるだと…?控えめに言って神じゃないか。

私は速攻でアプリをダウンロードした。開いてみると、配送料などのぶん少し割高な気はしたものの、あらゆる種類の料理が注文できるという点や配達時間の短さに驚いた。私は早速、ずっと食べてみたかったインドカレー屋さんのチキンカレーを注文した。

しかしこの時点ではまだ半信半疑なところもあった。いくら配達時間が短いとはいえ、やはり多少冷めてしまっているんじゃないか。それに、自転車に乗って配達している人をよく見かけるけど、結構揺れるしカレーが漏れていたりするんじゃないか。そんなことを考えているうちに、玄関のベルが鳴った。注文してからわずか25分ほどのことであった。

ドアを開けると、「どぅも!ウーバーでぇす!」の明るい一言と共に、お兄さんが元気よくカレーを手渡してくれた。そしてタッチアンドゴーな速さで「ありゃます!(ありがとうございます)」と言いながら走り去って行った。
あまりの速さにイケメンかどうかゆっくり確認できなかったが、長い髪に髭を生やしたオシャレな感じの人に見えた。

カレーは熱々で漏れていることもなく、ナンもフワフワでそりゃもう最高だった。
家だから好きな音楽も流せるし、食べ残してしまっても冷蔵庫に入れておいてあとでまた食べられる。これはハマらない理由が見当たらなかった。

そういえばあの配達のお兄さんたしかにイエス・キリスト寄りの風貌だったし、本当にUber Eatsは神なのかもしれないと思った。

それからというもの、私はすっかりUber Eatsの沼にハマってしまった。そして会う人会う人に最近のマイブームとして話をしていた。すると、ある友人がふとこう言った。

「でもさあそれ、太らない?」

…完全に盲点だった。私はそんなこと1ミリたりとも考えていなかったのである。

でも、冷静に考えればその通りである。コンビニまでの道のりさえサボって歩かなくなり、ただ家で好きなものを食べる。たしかに最近、体が少し重たいような気はしていた。

おそるおそる体重計に乗った。しっかりばっちり太っていた。

私は反省した。こんな生活を続けていたら心身ともにダメになる。梅雨が明けたらもうやめよう、きちんと外に出よう。買い出しに行って、自炊もしよう。

やがて梅雨が明けた。

それと引き換えに、うだるような暑さがやって来た。

ここ最近は特に、ちょっと外に出るだけで肌がジリジリと焼かれている感覚を覚える。すぐに汗をかくから結局洗濯物も増えるし…やっぱり外に出たくない。

というわけで、今この原稿もUber Eatsで頼んだやつを食べながら書いている。冷房ガンガンの部屋で食べるケバブ、マジ美味い。

この夏、私はまだまだこの沼から抜け出せそうにない。

関取花(せきとり・はな)
愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けているミュージシャン。
昨年はNHK「みんなのうた」への楽曲書き下ろしやフジロック等多くの夏フェス出演を経て初のホールワンマンライブを成功させた。
2019年5月8日にユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。
ちなみに歌っている時以外は、寝るか食べるか飲んでるか、らしい。
関取花オフィシャルサイト

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