2019.8.14
TALK

HIROBA Part 1
矛盾を内包しているのがいい

HIROBAの音楽作品第2弾となる「僕は君を問わない/凪」。
同世代のアーティストである高橋優さんとのコラボレーションが実現しました。
高橋さんと制作することになった経緯や過程について
水野良樹が語るインタビューを2回に分けてお届けします。

Part 1 矛盾を内包しているのがいい

──まずは、同世代のアーティストと制作したいと思った理由と、同世代のなかでも、なぜ高橋優さんにお願いしたのかを教えてください。
水野自分が考えていることと、歌われる言葉との距離が近い作品をつくりたいと思っていたので、何かの事象を並んで一緒に見て、語り合うことができるような相手が必要で、それは同世代の人だと思ったんです。本当の意味で同じ時代感覚を共有できる世代って、せいぜい数年単位の幅だと思うんですよね。少し上でも、少し下でも、だいぶ違ってしまう。多感な時期というのは短いですから、その時々の空気感を一緒に共有できる世代というのは実は少ないと思うんです。言語化しようとすると長い説明が必要になってしまうことも、パッと理解しあえる感覚というか。そんな相手を探したときに、自分と違うことをやっていて、だけど同じゾーンというか、あまりにかけ離れた場所にいるわけではない方をイメージして、そこで高橋優さんが浮かびました。

僕はグループで活動してきて、ボーカルが女性で、自分とは全く違った人間性を持ったシンガーに自分が書いた言葉を歌ってもらう。つくる人と歌う人が違う。それぞれが違う物語を生きているけれども、一緒に曲をつくり出すことによって、互いに結びつく。その結晶みたいな作品が、いろんな人に受け入れられていくっていうスタイルで、長いことやってきたんですね。

高橋さんは平成時代のシンガーソングライターとして、歌う言葉とご自身との距離が近くて、かといって、尖りきってアウトサイダー的なところにいるかというと、そうではない。テレビにも出るし、僕がいきものがかりでやってきた音楽の方向性と合致する部分も多い。マスへの気持ちをしっかり持っていながら、自分のメッセージや自分の歌を伝えられる人で、そんなふうに、違う部分と共通点のどちらも持っている存在はそんなに多くはないと思うんです。

──高橋さんのどういったところに魅力を感じていたのでしょうか?
水野矛盾を内包しているのがいいなと思っていて。高橋さんは、歌のなかでメッセージであったり、考えであったり、わりとはっきりと言っているタイプのシンガーです。そうなると先鋭化していくというか、ほかを拒むような感じになりがちですけど、高橋さんはポップでもあり続けています。

閉じているようで閉じていない。でも、アルバムの曲を聴くと、全然開いていない曲があって。そのスタンスは共感できるんですよね。僕はいきものがかりというグループで開いているように見えるけど、一面ではすごく閉じている。今は変わってきましたけど、自分が考えていることだったり、いわゆるメッセージみたいなことを素直には書かないというか、表層的には曲に乗せません。楽曲自体はポップなイメージもあるから開いているように見えますが、書き手の心は開いていないんですね。その矛盾を抱えて、むしろ矛盾を込みで曲づくりをしてきたんです。

自分の表現を尖らせていく。オーディエンスだったり、仲間だったり、周囲の反応がどういうものであれ、そのスタンスを変えたりはしない。それを守ることにちゃんとこだわる。ある意味で、外部からの影響を意識的に閉ざすかたち。これもすごく素晴らしい姿勢ではあります。一方で、矛盾を抱えているからこそ話し合えることもあります。外部に表現を開くという行為は、自分の内面に矛盾が生まれる可能性と、常に隣り合わせですから。要は、開くのも閉じるのも、バランスをとるのが難しいんです。
自分自身と歌詞との距離が近すぎると、表現は濃くなっていきますが、閉ざされがちで。良くない意味で、その人だけにしか理解できないものになってしまいがちです。高橋さんは言葉が自分の近くにありながら、ちゃんとポップスの感じでやれているのが、バランスがいいなと。そこへの敬意と、うらやましさがありました。

──水野さんから高橋さんにお願いして、実際に会ったところ、話が盛り上がって2時間くらい会話を交わしたということですが、どういったことを話したのでしょうか?
水野お互いの長い自己紹介をするような感じだったんですよね。高橋さんは秋田の出身で、どんなふうに音楽を始めたとか、そういったところから会話をスタートして。僕の方から「同世代で、同じ景色を見てきた人と何かをやってみたい」という今回の趣旨を伝えたんです。僕らの思春期には、大きな事件や災害が多くあったので、それらについてリアルタイムで見ていて、何を考えていたのかを「こうでしたよね」みたいに振り返って、そこから順々と、今現在の視点にたどりつくまで、話し合っていきました。

「今は、すごく、みんなが誰かを責めていますよね」ということも話して。よく言われることですけど、毎日、誰かが謝罪をしていて、誰かが誰かを責めていて、正しいことと正しいことがぶつかり合ってしまって、妥協点が見つからない息苦しさみたいなものが世の中に満ちていて。

その人のなかで「これだ」という正義が一つあると、それ以外はすべて許さない、という感じにどうしてもなってしまうことに、どう向き合っていけばいいんだろうみたいな話もしました。漠然とですが「責める言葉はあまり言いたくないね」と。何か一つの正義をバーンと提示するような歌ではなくて、お互いを許せるようなことをイメージできるといいですよねと。

──そこから具体的にどう進めていったのでしょうか?
水野僕は最初から、高橋さんに詞を書いてもらいたいなと思っていました。進行の仕方としてはまず、詞の方向性みたいなものを高橋さんから送ってもらって、そこからやり取りをスタートしましょうかという話になって。それで何週間か経ったあとに、今の完成形からすると約7~8割くらいまでは出来上がっている、歌詞のボディみたいなものを一つ送っていただきました。それが「僕は君を問わない」につながる歌詞です。そのすぐ後に「もう一つできちゃって」と、対になったものを送ってくれたんです。それが「凪」になるものですね。

言葉のなかにエネルギーが溜まっていることはどちらも同じなんですよね。「僕は君を問わない」は、そのエネルギーが放出するほうに向かっている気がしました。「君を問わない」というフレーズは強い意志の表明ですからね。どうして互いに責め合っているのか。それに対しての怒りであったり、不満であったり。そのなかで自分のスタンスはこう在りたいと、意志を示している。

一方、「凪」は感情自体はあるけれども、それを放出することを拒んでいる。鬱積したり、沈殿したりしている感情が内面でうごめいていて、そのことで生まれる緊張感がある。

「凪」は言わないんですよね。言わずに、うごめいている感情があることを感じさせる。表現としては、その内心の感情がどれだけ熱いものであるか、激しいものであるか、感じ取らせるようなかたちになっている。感情を放出していないというのが人間らしいなと思って。ぶちまいてしまうのも人間である一方で、言えばいいのに言えない、というのも人間らしい在り方ですよね。

「僕は君を問わない」と「凪」は対になっているんですよ。ある種、反するような、二面性を持っているっていうところが、さっきの矛盾という言葉にもつながりますけど、僕はすごく人間らしいなと思っていて。これは二つ揃ってはじめて成立する表現なんだなと思ったんです。

ただ、当初、スケジュール的には制作できるのはおそらく1曲だろうとスタッフさんとも話していて。さまざまな制約がありますからね。高橋さんに負担をかけすぎるわけにもいかないし。なので1曲、どちらかを選ばなければならない。これは困った、どちらを曲にしたらいいだろうと考えたときに、もらった二つの作品をドッキングさせて、一つにまとめようかなとも思ったんですが、やっぱりそれは難しいなって思って。

それで結局、僕は時間があったので、2曲つくってしまったんです。それも本当にタイプの違う曲を。一つはポップスとして成立する、エンタメ作品にもなるようなもので、それが「僕は君を問わない」です。もう一つは、ポップスとして成立するかは微妙ですみたいな(笑)。そういうことは考えないというか、単純に言葉をどう聴かせるかという観点で。この曲は語りみたいになるだろうなと思ったので、これをポップスのメロディにするとしらけるなと。3連の「タタタ、タタタ、タタタ」というラップのスタイルみたいなものを取り入れて、それがうまく歌詞のなかで組み込めないかなと。そんなふうに考えながらつくっていったら、「凪」はあんなかたちになったんですよね。

もう両方とも聴いてもらって、高橋さんに選んでもらおうと思って。そうしたらうれしいことに、二つできるなら二つやったほうがいいですよねってなったんです。「僕は君を問わない」のレコーディングが先にスタートしていたんですけど、関係者の方々がいろいろな調整をしてくださって、「凪」もやれることになって。

今振り返ると、やっぱり2曲があることによって、はじめて表現できている世界があるので、時間はかかったけど2曲とも制作できたのは本当によかったです。冷静に考えてみたら、シングル文化に慣れすぎていて、1曲で何かすべてを表現しようとしすぎていたのかもなと。2曲で表裏一体、複数の作品で全体を表現する。そんな表現方法もあって当たり前だよなって、改めて気づきましたね。

──歌い分けるのではなく、二人が一緒に歌うというのも、重要なポイントかもしれないですね。
水野そうかもしれないですね。主メロは高橋さんにとってもらい、自分がコーラスで入っていくイメージで最初はつくりました。男性同士なのでキーの問題も大丈夫だろうと。ある程度、張れるところで一緒に歌えるから、歌い分ける感じというよりは、サビでユニゾンしたりね。コーラスもいろいろなパターンがあって、コードトーンをなぞって支えるようなコーラスと、そうではなくて別メロディを歌って主メロと並走していくようなコーラスがある。比べるのはおこがましいんですが、高橋さんは自分と声質が近いと思っていたので今回は後者でやるほうが面白いなと思って。実際に録ってみたら、二人の声ですごく調和が取れて、楽しかったですね。僕が先に録って、高橋さんが後から録ったんですけど、高橋さんの熱に引っ張られて、テンションを合わせようっていうことで「僕は君を問わない」は、自分の歌を録り直しました。「凪」もちょっと直したかな。

今回の制作は、表裏一体というか、二つのものをどう成立させるかというのが、裏テーマとしてあったのかもしれないですね。メインのメロディも、裏でコーラスがどんなメロディを走らせているかを意識したうえでつくられていたりします。つまり、最初から二人がいないと成立しない想定で曲をつくっている。デュアルメロディみたいなイメージですかね。「凪」なんかは、まさにそう。

そういう意味では、ライブでやるのは大変ですね。高橋さんがいないとできない(笑)。「僕は君を問わない」もコーラスラインがすごく生きているので、二人じゃないとあの加速していくような雰囲気は出せないですよね。

(つづきます)

Text/Go Tatsuwa

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