2019.9.4
ESSAY

関取花 連載第8回 得意料理

最近、自炊を再開した。

理由は単純で、先月頼んだ分のUber Eatsの引き落とし額を見て愕然としたからである。ちゃんと自炊していたらこの何倍の食事ができただろうという額だった。深く反省した私は、誘惑に負けないために泣く泣くスマホからアプリごと消去した。

得意料理

最近、自炊を再開した。

理由は単純で、先月頼んだ分のUber Eatsの引き落とし額を見て愕然としたからである。ちゃんと自炊していたらこの何倍の食事ができただろうという額だった。深く反省した私は、誘惑に負けないために泣く泣くスマホからアプリごと消去した。

そんなわけで久しぶりにきちんと毎日自炊生活をしているのだが、早速さまざまな変化があった。

まず身体の調子がすこぶる良い。
体調に合わせて食事を作るようになったことで、胃もたれなども以前より少なくなった。お通じもお肌の調子も良くなったし、目覚めも良くなったような気がする。

あとはまあ、単純に立っている時間が増えた。
料理をしている間や片付けをしている間は必然的に立っていなければならない。食材を買いに行くことも増え、スーパーをはしごするついでに散歩もするようになった。
ちなみに最近の散歩の時のBGMはエミネムで、エコバッグからネギとニラをはみ出させながらノリノリで歩いているやつがいたらたぶんそれは私である。

しかしもちろんいい事ばかりではない。いろいろと手間と時間がかかるし、この時期の自炊はとにかく暑い。

私の部屋は1Kなのだが、狭いキッチンのドアを閉めきってしまうとちょっとお湯を沸かすだけで汗をかいてしまう。少しでも風通しを良くしようとドアを開け放って料理をすると、今度は部屋全体が暑くなる。部屋が広ければそうならないのかもしれないが、あいにく私の部屋は狭い。
クーラーをつけてもいいのだが、匂いがこもるのがいやなので私はなるべく窓を開けるようにしている。だからやっぱり暑い。さてどうしたものか。

そこで便利なのが電子レンジである。
火をずっとつけている必要もないから部屋も暑くならないし、油も使わないから掃除も楽々、おまけにヘルシーにもなる。やだ素敵、好きになっちゃう。そんなわけで、最近私は電子レンジ調理にハマっている。

先日、久しぶりに目玉焼きが食べたくなったので早速電子レンジで作ってみることにした。
ラップをかけてチンをするだけだし、べつにわざわざ調べなくてもなんとかなるだろう、ということで勘だけを頼りに作ってみることにした。
頃合いを見て取り出してみたところ、きちんと白身は固まっていたし黄身にもいい感じに膜が張っていて、初めてにしては上出来に見えた。早速食べてみようと部屋のテーブルに移動し、熱々の黄身に箸を入れたその瞬間である。

…まさかの大爆発である。

なぜ。なぜだ。しかもなぜよりによって庫内じゃなくて部屋の中なのだ。

私は一瞬何が起きたかわからなかった。派手な音と共にまるでクラッカーから飛び出してくるかのように、卵が部屋じゅうに散らばった。
あたりを見渡すと、壁、床、棚、カーテン、ギター、布団…部屋の中にあるあらゆるものに卵が付着していた。ただの大惨事である。

そのあとなんとか重い腰を上げ掃除をしたわけだが、結局一時間以上の時間を費やしてしまった。部屋も暑くならないからいいと思って電子レンジを使ったのに、隅々まで散らばった卵を拭いていたら終わる頃には汗だくになっていた。食べたかった目玉焼きも食べられず、楽をするどころか無駄な手間が増えただけ。我ながら本当に馬鹿だと思った。

後日、ネットで見つけたやり方通りに電子レンジで目玉焼きを作ってみたところ、ちゃんと爆発させることなく作ることができた。前回の失敗のせいもあるのか、えらく美味しく感じた。その後も何度か試しているのだが、最近は好みの半熟具合にできるようになってきた。もうすっかりプロである。(たぶんプロの料理人は電子レンジで作らないけど)

最近は少しずつ涼しくなってきたので煮物なんかも作るようにしている。これを機に「趣味は料理です」と言える女になりたいものだが、今のところの得意料理は「電子レンジで作る目玉焼き」である。モテなさそう過ぎてヤバい。

関取花(せきとり・はな)
愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けているミュージシャン。
昨年はNHK「みんなのうた」への楽曲書き下ろしやフジロック等多くの夏フェス出演を経て初のホールワンマンライブを成功させた。
2019年5月8日にユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。
ちなみに歌っている時以外は、寝るか食べるか飲んでるか、らしい。
関取花オフィシャルサイト

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