2019.10.8
TALK

HIROBA Part 2
新しいことを言う前に今できる微調整をしないといけない

今年4月にHIROBAがスタートして、半年が経過。
その間にふたつの音楽作品をリリースし、
さまざまなジャンルの方々とも言葉を交わしてきました。
そのなかで生まれた思いや、今感じている課題など、
「HIROBAのいま」を全3回にわたって水野良樹のインタビューで届けます。

Part 2 新しいことを言う前に今できる微調整をしないといけない

──前回のインタビューでも、楽曲制作をいちばんに考えていきたいとおっしゃっていました。
参照:HIROBA TALK 水野良樹 Part 5 基準値を変える作業というのもHIROBAがやるべきものだと思う

水野そうですね。やはり僕は曲をつくる人間ですからね。そこは変わらないですね。8月には高橋優さんとのコラボ作品で「僕は君を問わない/凪」もリリースしました。こちらは小田和正さんとコラボした「YOU」や、僕ひとりでつくった「I」とは、また違う雰囲気の曲になっているので、より跳躍して、広がっていけるといいと思っています。

音楽の伝え方という点では、前回のインタビューでも「既存のフォーマットに囚われずに」ということを言ったのですが、現実は難しくて…ものすごく壁にぶつかっていますね。それはジャケットひとつをつくるにしても、プロモーションでメディアに向き合うにしても、壁は大きいですね。何か些細な変更をするにしても、大変な時間がかかったり、多くの人の許可を得ないといけないんですよね。「既存のフォーマットに囚われずに」という自分の言葉と行動が一致しない状況にあるので、そこはとても苦しいですけど、やれるところからクリアしていきたいと思っています。

参照:HIROBA TALK 水野良樹 Part 3 理想とする活動は、自分のレギュレーションでなければ、実現することはできない

──今の音楽の伝え方は、多くの人が関わっていて、多くのルートを通った上で、リスナーに届きます。既存のフォーマットではない、新しい音楽の伝え方になった場合も、多くの人が関わること自体は変わらないんでしょうか?
水野変わらないと思いますね。ただ、意思決定者がミニマムになるので、そこが大事な点ですね。今、僕が言っていることは何も新しいことではなくて、厳しい言い方をすると当たり前のことをしようとしているだけです。その当たり前のことがなかなかできない。

今の時代のタイム感に合わせていくときに、もっと自由度があっていいと思うんです。でも音源を扱うときには権利が問題になるし、プロモーションの部分でもさまざまなメディアとの関係性がある。作品の魅力を伝える上で、必要のない部分に体力を使わざるを得ないことがもったいないですよね。でも、今の時代、今のスピード感に合わせた適合がいくらでもできるとは思っています。

ビッグネームのアーティストがサブスクを解禁したというニュースが出たときに、新たな時代が開けているようなニュアンスが伝わってくるけど、正直めちゃくちゃ遅いし、これまで保守的なことを業界に強いてきたということを認識しなければいけないですし、新しいことを言う前に今できる微調整をしないといけないですよね。

──これまでの慣習もありますし、大きな業界、大きな組織だと、変えるということは、やはり簡単なことではないんでしょうね。
水野その通りですね。CDジャケットの様式ひとつを変えるにも大変な手続きが必要で、現場スタッフにかかる負担も大きいんですよね。これだけ個別にエンタメを楽しむ時代に、それぞれのアーティストが表現様式を変えることは当たり前のこと。それを何十組もいるアーティストに標準フォーマットを強いるということが非常に時代にあっていない。フォーマットを自由にしたほうが、アーティストの利益は最大化すると思うんですよね。でも、これまでのルールや慣習がある。それを変えることはひとつのアーティストだけではできない。そうすると「じゃあ自分でやるわ」と力のあるアーティストは去っていってしまいますよね。アーティストも現場のスタッフもそれぞれの立場で頑張っているのに、大きなルールに負けて、悲しい連鎖が生まれてしまう。それは変えるべきことだし、もっとうまくできると思って、頑張ってやろうとしたんですけど…なかなか難しいですね。

HIROBAは何の影響力もない、ずぶの新人なので、難しいですけど、この経験は生きると思います。ずぶの新人だからこそ自由が利くという部分もあるので、うまくやりたいですよね。

大事なことは、工夫をしているという目新しさや仕組みでではなく、本質的な作品の魅力を伝えることです。よりわかりやすく、より遠くまで、伝えるという工夫を今の時代にあったやり方でできないだろうかと。それをアーティストが考えているということです。仕組みをつくることが最大の目的ではなくて、作品の魅力を最大限に伝えるスムーズな流れをいかにして生むか。それを考えていかないといけないですよね。仕組みは、目的を達成するための手段でしかないですから。

既存のプロモーション記事にしても、もちろん信頼できるメディアやライターさんもたくさんいます。一方で、自分たちから語り出す言葉、自分たちだからこそ踏み込んでいける場所があって、それを記事化していく。それは作品の魅力を伝えるためのシンプルなアクションをしているだけなんですよね。

(つづきます)

Text/Go Tatsuwa

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