2019.12.28
TALK

水野良樹×Sano ibuki Part 3
歌というものがあるけれど、
そこに遮られたくない

今年11月にメジャーデビュー作となる
待望の1stフルアルバム「STORY TELLER」をリリースし、
注目を集めているシンガーソングライターのSano ibukiさん。
J-WAVE「SPARK」で3週にわたってオンエアした対談の模様を
HIROBA編集版としてお届けします。

Part 3 歌というものがあるけれど、そこに遮られたくない

水野毎回、対談相手に聞いているんですけど、「今、ひとつだけ音楽に関する能力を魔法で伸ばせるとしたら、どの能力を伸ばす?」。

Sanoそうですね…。

水野音楽にまつわることであれば何でもOKです。作詞の能力でも、楽器の技術でも。

Sanoうーん、なんだろうな。でも、僕は…歌が上手くなりたいです。

水野おお!そうなんだ。歌に求めるものは何ですか?

Sano僕は昔から「歌が上手じゃないね」ってずっと言われていて。

水野え!意外です。

Sano音痴って言われることがすごく多かったんですよ。

水野えええ!あんなに、いいのに!?うらやましいですよ。

Sano音痴だなと思う瞬間が多かったので、自分自身ではわかっていて。中学生の頃なんかは歌うことが恥ずかしいと思っていたくらいなんですよ。

水野そうなんですか。

Sanoそれがだんだんと「上手になりたいな」と思うようになりましたし、「もしかしたら自分の声で伝えられる何かがあるかもしれない」と考えるようになって今歌っていますけど、やっぱりレコーディングでも、ライブでも、「もっと伸びやかに」「もっと透き通るように」といつも反省してしまって…。

水野いやぁ、真面目だなぁ。

Sanoやっぱり「もっと上手になりたいな」と思うんですよね。

水野そうか。自分の声を意識して曲をつくりますか?

Sanoまったく意識していないですね。

水野そうなんだ!声はいったん置いておいて。

Sanoはい。なので、いざ自分で歌うとなったときに「あれ、これ、出ないんじゃないか?」ってなったり。

水野最初につくるときは、作家的なつくり方というか。

Sanoそうですね。Sano ibukiという存在をどれだけ消すことができるかを考えていて。

水野ええ、おもしろい!

Sano僕が歌わない可能性も見越して、何も考えずにつくっていることが多いので。

水野でも、出来上がった作品はちゃんとSano ibukiさんになっている気がしますよ。

Sano本当ですか?無意識なところはあると思うんですけど。

水野そうかそうか。

Sano自分の声に関してはまったく無意識につくるので、毎回新曲をつくるたびに自分の声のトップを超えていかないといけないというか(笑)。

水野作家Sano ibukiはシンガーSano ibukiに対して厳しいんだね(笑)。

Sano「お前、もっと行けるだろ!」って(笑)。

水野そうなんだ。

Sano「僕の声が曲の邪魔をしたくない」と思ってしまうんですよね。

水野ああ。

Sano曲を伝えるにあたっていろんな声の表現にチャレンジしているんですけど、僕というものが主張しすぎて曲の概念を壊すことがいちばん怖いというか。

水野はい。

Sanoそういう意味で、歌が上手くなればなと思うんですよね。

水野なるほど。楽曲至上主義ということなのかな。

Sanoうーん、そうかもしれませんね。

水野僕ね、自分が好きになってライブにお誘いしたり、対談に来ていただいたりする人って、話していて共通点が見つかることが多いんですよ。

Sanoはい。

水野「楽曲に自分の色が出すぎないように」「自分が限界点にならないように」ということは僕もすごく思っていることで。「僕という存在よりも、楽曲で何を表現するかが大事だ」と、わりと強く思っているんですね。

Sanoわかります。僕も歌うということが前提にはありますが、「歌というものがあるけれど、そこに遮られたくない」という思いがあって。やっぱり作家としては…。

水野やっぱり、作家の気持ちのほうが強いんですよ、分量的に。

Sanoそうですね。

水野Sanoさんはシンガーソングライターと書くときにソングライターのほうが太字になっちゃってる(シンガーソングライター)感じですよね、きっと(笑)。

Sano(笑)ほんとにそうです!だから、ライブも震えちゃうんですよ。

水野(笑)もしかしたら、そのソングライターという恐怖感が、克服するとかではなく、違った角度になって、自分のことを「このシンガーもいいかも」って思った瞬間に新たな説得力が生まれるんじゃないですか?

Sanoそうですね。

水野そんな気がする。

Sano僕自身、「魔法」の頃よりも、ちょっとずつ自分を信じられるようになっているというか。

水野いいじゃないですか!

Sano自分でも「今後、どんな声を出すんだろう?」って気になるんですよね。

水野僕はいきものがかりの放牧中に、初めて他のアーティストの方々に楽曲提供させていただいたんですよ。

Sanoはい。

水野吉岡よりもキャリアのあるシンガーの方もたくさんいらっしゃいましたし、全然違う個性を持ったシンガーの方に書かせていただいて、そのとき初めて気づいたのは…。

Sanoはい。

水野曲づくりを始めたのは高校生の頃で、その始めた瞬間くらいから吉岡に歌ってもらっていたんですよ。

Sanoあ、そうなんですね。

水野そうすると、無意識レベルのところまで吉岡の声で曲づくりをしているんですよ。

Sanoああ、わかります!

水野吉岡の声が僕の曲づくりに内包されているというか。

Sanoもう自分の声のようになっているんですね。

水野そうそう。そうなっちゃってるんだってことに、他の人の曲をつくったときに初めて気づいて。

Sanoああ、なるほど。

水野そこまでなると「吉岡のことをすごいと思った」とかそんな簡単な話でもなくて、「この人はもう…他人であって、他人じゃないんだな」みたいな。

Sano「自分なんだな」に近いというか。

水野はい、それをすごく思ったんですね。そのときに開けるものがあって。具体的に言葉にできないんだけど、説得力のプラスになるものというか。

Sanoわかります。

水野それは僕の場合は「他者」という違うシンガーだけど、Sanoさんの場合はご自身のなかにさらに上のステージが見えてくるんじゃないかと、今すごくワクワクしてきました。

Sanoそうか…おもしろいですね。

水野いやぁ、ほんとに。

Sano僕が生まれたくらいから、いきものがかりさんの曲が世の中に流れていて…。

水野(笑)恐縮です。

Sanoそうか、やっぱり染み付いているんですね。いきものがかりという存在が。

水野なんかね、自分はそう…なっちゃってましたね。吉岡は放牧中にソロで、自分の好きなスタンダードな曲のカバーアルバムを出したんですよね。

Sanoはい。

水野いろんな曲を候補曲として歌ったときに、自分のタイプとは違う曲もあったみたいなんですよ、当たり前だけど。

Sanoそうですよね。

水野そのときに「いきものがかりの曲で自分に合わない曲ってなかったな」と、はたと気づいた。

Sanoああ!

水野山下と水野がつくった曲で「この曲、私に合わないわよ」っていうものはほとんどないと。

Sanoえ、そうなんですね!

水野「それって、とんでもなくいいことだな」みたいな。お互いフィットしてるってことですよね。

Sanoとんでもないことですね。

水野Sanoさんの曲って、もちろんSano ibukiというシンガーを外れてもいい曲なんだろうけど、分かち難いつながりがどこかに必ずあって。

Sanoそうですね。

水野それに対して自分自身で何かをグッとつかんだときとか、自信を強く持てたときに、同じ曲も違うものになったり、それがまたソングライターとしてのSanoさんにも…。

Sano影響を与えそうですよね。

水野ねぇ。もっと開けてくると思ったら、楽しくないですか?

Sano自分にももっと可能性があるというか…。

水野絶対ある!

Sano歌詞でもそうですけど、自分のことを信じられないから「信じたい」とよく書いちゃうんですよ。

水野はいはい。

Sano常に信じたいと思うし、もっと可能性があると思いたいので、そう言っていただけるのは…ものすごくうれしいですね。

水野1年後、2年後にお会いしたときにまたお話を伺って、この会話が作品につながっていたらうれしいな。これからもいい作品を期待しています。

Sanoすごく楽しかったです。

水野ああ、よかった!

Sano本当に、喋り足りないくらい(笑)。

水野ぜひ、また来てください。

Sanoはい!

水野僕もいろいろな共通点も見えたし、「そこで通じ合えていたんだ!」って思えることも多くて、すごくうれしかったです。

Sanoありがとうございます!

水野ありがとうございました。

(おわり)

Sano ibuki(さの・いぶき)
シンガーソングライター。
2017年、本格的なライブ活動を開始。
自主制作音源「魔法」がTOWER RECORDS
新宿店バイヤーの耳に留まり同年12月に
同店限定シングルとして急遽CD化され、注目を集める。
2019年11月にデビューアルバム「STORY TELLER」をリリース。
公開中の映画「ぼくらの7日間戦争」主題歌の「決戦前夜」、
2020年1月24日(金)より公開の映画「his」の主題歌「マリアロード」も
収録されたアルバムで早くも話題となっている。
2020年2月には東京と大阪で単独ライブ
「Sano ibuki LIVE “NOVEL”」を開催する。
Sano ibukiオフィシャルサイト
Sano ibuki Twitter
Sano ibuki Instagram

Photo/Manabu Numata
Text/Go Tatsuwa

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