2020.1.17
TALK

『打って、合わせて、どこまでも』 〜阿部さんと水野くんの永遠会議〜 第6回
おとなCの日常

コピーライターの阿部広太郎さんと一緒に企画を考えるこの連載。
阿部さんからいただいた「いっしょにを、広げよう」というコピーをもとに、
実際にどんな企画にしようかと考えるものの…。
果たして企画はまとまるのだろうか。

打って、合わせて。
言葉をラリーする、とりとめもない時間。
とりとめもないから、整理しきれていないことだらけ。矛盾を抱えていることだらけ。いつ始まり、いつ終わるかも判然としない。だけど、何かがみつかる瞬間であったり、何かにたどりつく瞬間であったりを、ドキュメンタリーとして、お伝えすることはできるかもしれません。

HIROBAのリアルタイムドキュメンタリー。ぜひお読みください。

第6回 おとなCの日常

場所:それはきっと六本木の会議室

龍輪(編集) ここまでの話を踏まえて、実際に体現していくにはどうしたらいいか…。

阿部一緒につくることは、ぜひやりたいですよね。しっかりとしたテーマを設けながら。

水野ありがとうございます。何か、想像力を働かせるという意味だと、大人への日常的なこと…答えがないことのほうがいいのかもしれないですね。

阿部そうですよね。大人への道を。AかBかではなく、Cを。


※「おとなCの日常」水野の企画書から

水野「おとなC」(笑)。

阿部「おとなC」(笑)。

水野こいつ、「おとなしい」やつだ。

阿部いい、いい!面白いですね。

水野結局、自分たちが考えている価値観を、現実の人間に当てはめていくという遊びなんですけど。

阿部いや、面白い。

水野そういうのって、いろいろ出てくる気がして。

阿部出てきそうですね。

水野「こういうときに、こういうこと言うやつは嫌だな」とかってあるじゃないですか。

阿部あります、あります。

水野「こういう人間であってほしい」みたいな、僕らが持ってしまっている偏見であるとかが、願望を指摘しているうちに浮かび上がってくる。「あ、そうか、俺らはこういうタイプの人間が好きなんだ」って。

阿部浮き彫りになりそうですね。

水野基本設定は未成年ではなく、大人のほうがやりやすいだろうな。

阿部なるほど。

水野そのほうが設定しやすい。あと、悪いやつじゃないこと。何か悪意を持っているとなると難しくなっちゃう。ただ、駄目な人はたくさんいるじゃないですか。自分たちもそうだけど。

阿部はいはい。

水野駄目なやつって、悪いやつじゃないんだよって。

阿部よくわかります。抽象的なものから現実を想像するって、面白いなぁ。


※「おとなCの日常」水野の企画書から

水野現実の導き方は、もっと細かく詰めてもいいと思うんですけど。

阿部考えていけそうな気がします。

水野設定ができると、サイドストーリーがさらに出てくると思うんですよね。

阿部どんな休日を過ごしてるのか、とか。

水野枝葉が出てくる。

阿部そうすると、いろいろな人間像が見えてくる。HIROBAから生まれていく感じがします、「おとなCさん」が。

水野(笑)

龍輪(編集) 表裏一体なものについて話していくのも、面白いかもしれないですね。

阿部それはまさにCの考え方ですね。

龍輪(編集) AかBじゃなくCで、そのCにAの面とBの面も含まれることもあると思うし。

阿部考えてみることで気づくんですよね。

龍輪(編集) 結局、「CってAとBが合わさったものなんだね」みたいなことになるのかな。

阿部そうですよね。創作のひとつのやり方は、現実にあるものを抽象化していくけども、アプローチを逆にする。ふわふわしたみんなの抽象的なイメージを先につくり出して、そこから現実のつくり方を探って、何か考えていったらどうかなと。

水野面白い。

阿部例えば質問を募集する。「おとなCさんに聞きたいことがありますか」みたいな。先にクエスチョンをもらって、Cさんだったら「こう答えるかな」とか、「どう答えるかな」みたいなことをひねり出していく。Cさんは、僕でもなければ、水野さんでもなく…。

水野そうですね。

阿部いくつもの自問自答ですよね。問いがあって答えがあるところの積み重ねから、Cさんってこんな人かなというのが見えてきて、そういうところから表情や性格の輪郭が見えてきて、それをイラスト化する。

水野イラストは面白いかもしれないですね。

阿部キャラクター化すると、顔や表情が見えてくる。例えば「サザエさん」だったら、波平さんをみんな知っているように。「Cさんって人がいたよな」って思い浮かべるだけで、何か問題に直面したときに、ちょっと俯瞰して考えるきっかけになるだけでも、すごく意味がある。Cさんというキャラクターがみんな引き出しのひとつに入ってほしいなと。

水野それは面白いですね。

阿部疑問や質問を募集して、答えていくうちに輪郭ができてくる気がするんですね。

龍輪(編集) どういう質問を募集するのか…そのイメージが浮かばなくて…。

阿部なんでしょうね。

水野どういう質問を募集するかというのもあるんですが、まずは、その質問にずっと答えつづけていく。それは設定を考えていくという作業になりますよね。それが積み重なると、人物像がだいぶ見えてきて、そこでイラストを描こうとか、その人のイベントをしてみようとか、いろいろなアイデアが出てきて広がっていく。何が生まれるかというと、「おとなC」が定まっていくんですよね。

阿部はい。

水野ただ…その定まっていくことを良しとするのか。


※「おとなCの日常」水野の企画書から

阿部そうなんですよね。

水野それはひとつの課題ですね。場合によって「おとなC」という空欄を自由に使って、「おとなC」が何十人もいるとかということにしたほうがいいのか、それともひとりの人間をつくっていくという思考実験をしてみるか、どちらが面白いだろうな。現実的な広がりやビジネス的な観点で考えると「おとなC」の設定が定まっているほうが伝わりやすい。

阿部うーん、わかります。

水野どんな質問が来るかによって人格が変わっていくという、新たな視点がある。

阿部確かに、ありますよね。

水野その人に何を聞くかで、その人の人格が変わっていく。これ、すごく面白くないですか。

阿部はい、実はそうなのかも、と思っちゃうくらいに!

水野人間というものをひとつの物語としたときに、実は外側を埋めるだけで、ひとりの人間があぶり出されていく感じにはなる。


※「おとなCの日常」水野の企画書から

阿部間違いないですね。

水野多少ユーモアを盛り込みたいですね。

龍輪(編集) 違った視点に気づくことができそうですね。

阿部そっちからくるか!の視点は大事ですよね。

龍輪(編集) 「優しいですか」って、そのものズバリを聞いたら「はい」か「いいえ」になっちゃいますけど、行動について聞いていくと、そうはならない。例えば「ペットが捨てられていたらどうしますか?」「拾います」とか、「子どもが泣いているとき、腹が立ちませんか」「いや、子どもは泣くもんだから腹は立たない」と。それが積み重なってくると、この人は優しいとか、短気だとかという輪郭が見えてくる。心理テストみたいな感じですが。

阿部人生相談もそれに近い感じがありますよね。

龍輪(編集) そうですね、そうすると性別や年齢は関係なくて、その人の内面につながるというか。

阿部 A かBかに限らない行動のこととか、そういう質問をうまく誘導して投げ掛けてもらえたら面白いかもしれないです。「悩んでいること何?」とかでもいいかもしれないし。

龍輪(編集) ただ、この質問に誰が返すか…阿部さんと水野さんが相談して返すのか、それともそれぞれに返すのか。最終的にどういうゴールにたどり着くのかなと。

水野「一緒に」というところで考えると、広場に集まってくる人たちと一緒に設定を考えていくとするじゃないですか。もしくは阿部さんと僕が司会的な立場でいて、ゲストが毎回やってきて、その方と一緒に考えていく。ただ、僕たちが質問に答えると、それは僕らの答えになってしまうと思うんですね。

阿部そうなんですよね。

水野たぶん、僕らの倫理観に従った「おとなC」になっていく。それは、それで、僕と阿部さんの異なる倫理観があぶり出されていくので面白いですが。でも、多数の倫理観のほうがいいような気がします。逆に僕らが質問を考える、状況設定をする。答える側の意見が分かれるであろう行動や状況を僕らはしっかり考えて。

阿部なるほど。

水野「おとなCさんだったら、どうしますかね、皆さん」と聞くことで、もしかしたら見えてくるかもしれないです。

阿部まさにです、問いかけのほうが重要ですね。

水野実務的な課題はいったん置いておいて…まず、阿部さんと僕で状況設定、要は「問い」を考えますよね。イベントとして観客も入れて毎回ゲスト1名に来ていただきます。そのゲストに問いを投げかけて「Cさんはどうやって行動しますかね」というのを3人で語り合う。観客の方にも事前に問いを知らせておいて、観客の方の答えもその場でピックアップする。必ず3つくらいの結論を設定しておくけど、大事なことは「その答えを出すことではなく、いかに質のいい過程にするか」なので、背景をわかっている僕たちが、ある程度コントロールできるようにはしたいですね。

龍輪(編集) 個人で考え方が違うような正解のない問いに対して、無理やり答えを決めてしまうのも、ちょっと違う気はしますよね。

阿部そうですね。それは確かにそうです。

龍輪(編集) ちょっと冷静に考えると…水野さんがつむぐ言葉によって水野さんが理想とする世界に近づいていくということがある。この企画もそのアクションのひとつだと思うんですけど、最終的にCさんの人格を決めたときに、Cさんを見て何を感じてもらえたらうれしいのか。見た人にどういうふうになってほしいんだろうと。伝えたいことがあって、それを伝えるための手段として、何か一緒に企画をやりましょうということなんですけど、その手段によって伝えたいことがしっかり伝わるのかということを考えないとブレてしまう気がして…。

阿部それは、そうですね。

龍輪(編集) 一緒にだけど同化する必要はなく、お互いの違いを認めていこうとか、違いを認めてAとBで何か新しいCというものを生み出そうとなったときに、Cというペルソナをつくろうとしていることは、伝えたいことに沿っているのかどうか…ちょっとわからなくなってきた。

(つづきます)

Text/Go Tatsuwa

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