2020.3.4
TALK

水野良樹×関取花 Part 1
なんとなく違う扉を開いておきたいなと

毎月の連載で言葉にできないほどお世話になっている関取花さんが
3月4日にミニアルバム『きっと私を待っている』をリリース。
「これは絶対にお話を伺わねば!」ということでHIROBAでは初となる対談が実現。
話を進めるうちに、次から次へと共通点が出てきて…。

Part 1 なんとなく違う扉を開いておきたいなと

水野まずは毎月のHIROBAの連載、本当にありがとうございます!

関取いえいえ、素敵な場所をいただいて、こちらこそありがとうございます。

水野毎月楽しみで、オアシスのような存在です。

関取うれしいです。私も書くのが楽しくて。

水野3月4日にミニアルバム『きっと私を待っている』がリリースされます。どんな予感がしていますか?(ちょっと考えて)なんか…自分が聞く側でのリリースインタビューって初めてかも!

一同 (笑)

関取そうですよね(笑)。

水野新鮮だなぁ(笑)。

関取前作の『逆上がりの向こうがわ』よりは、自分の内側というか核の部分の出し方がわかってきた感じがしますね。

注釈:『逆上がりの向こうがわ』 2019年5月リリースのメジャーデビューアルバム。

水野そうなんですね。自分の変化には敏感ですか?

関取自分の変化に気づくのは、毎回新譜を出したタイミングですね。

水野マスタリングなども終わって改めて並べて聴いてみたときに…。

関取前作から今作までの間に「こんなことを思っていたんだな」と。

水野はい。

関取コンセプトを決めてつくることがないので、つくり終えたときに「ああ、私はこの1年はこういうマインドだったんだな」と気づくんですよね。

水野ああ。そこは主に歌詞の部分に出てくるものですか?

関取歌詞もメロディもどちらもですね。最近だとアレンジもですね。

水野そうですよね。サウンドの違いをより感じられるアルバムだなと思ったんですよ。もちろん作品が素晴らしいのは大前提として、やっぱり関取さんの声ってすごく強いなと思っていて。言い方を選ばずに言うと、この声を扱うのはすごく難しいだろうなと。

関取いやぁ…でした(笑)。

水野サウンドにしてもそうですし、ミュージシャンとのやりとりも含めて、この声を扱うって…繊細だなと。

関取そうなんですよね。

水野素晴らしい声であるがゆえに。難しさは感じましたか?

関取音の話はあまり聞かれないので、新鮮です。

水野そうなんですね。

関取自分でも思っていますし、プロデューサーもおっしゃっていたんですが、私の声は木管楽器っぽいんですよ。

水野ああ、なるほど。

関取わかりやすく芯があるというタイプではなくて。

水野そうですよね。

関取人気のあるハイトーンボイスとは違って、少し空洞感のある声だと思っています。それが自分の好きなアコースティックな音楽やフォークの雰囲気の楽器に合うんですよね。

水野はい。

関取それは自分でわかっていて、前作で得意なジャンルはやり切ったという思いがありました。今作で何をするか考えたときに、なんとなく違う扉を開いておきたいなと。バンドサウンドでと思ったときに、今までエレキギターをほとんど入れていなかったので。

水野はい。

関取ペダルスチールとかはありましたが、いわゆるギターロックではないけど、少しアプローチしたいなと思って。その分、苦戦した感じですね。

水野歌を書いているときは、そこまで見えているんですか?サウンドであるとか、音像であるとか。

関取そうですね。今作くらいからわりと参考音源というか、こういう感じのアプローチの曲は書いておきたいなという思いはありましたね。

水野どのくらい自分の声をイメージして書きますか?back numberの清水(依与吏)君は、自分の歌声も含めて「この人間がどういう言葉で、どんなことを歌ったらしっくりくるだろうかをイメージしている」とおっしゃっていて。歌い手はそこまで考えるのかと驚いたんですよね。

関取へぇ〜!

水野関取さんの場合は自分の声をどのくらい意識しながら、歌詞にどのくらい影響するのか。僕の場合は自分の歌は意識する必要がない。でも楽曲提供の場合はその歌い手の声を意識してつくらざるをえない場合もある。

関取ああ、そうですよね。基本的にはそんなに意識せずに書いていますね。歌ってみて気持ちいいかどうか、自分の声のスイートスポットの70点以上出るメロディラインや音域という部分で選別していますね。私の場合は歌詞は後からなので。

水野そうか。そうするとやっぱり飽きる瞬間も出てきますよね。

関取ありますね。

水野だからこそ、「新しい扉を開かなきゃ」という部分が今作には出ているのかなと思いました。すごくいい意味での葛藤が見えるというか。

関取そうですね。

水野新しいことをやっていこうと挑んでいる雰囲気が音からも伝わってきました。

関取「とりあえずやってみよう!」と振り切ってできるのは20代までのような気がしていて…。2019年5月にメジャー1枚目をリリースしました。これは関取花の自己紹介的な一枚で、名刺代わりのような感じです。今作は葛藤も含めて内側の部分も見せられたらと思ったんですよね。誕生日が12月(1990年12月18日生まれ)なので、次作は予定通り行けば29歳のうちに…。

水野誕生日、一日違いなんですよね、僕と。

関取え!どっちですか?

水野17日です(1982年12月17日生まれ)。

関取えー!射手座!

水野射手座です。

関取なんと、まぁ!

水野これも縁ですよ。

関取ですね、うれしい(笑)。

水野今年で30歳になるんですね。

関取そうなんです。なので、今年の12月までの間に1枚くらい出したいなと思うと、今作も含めて「あと2枚だ」と。

水野ああ。

関取20代の間にやりたいことをやって、今まではわりと音楽プランを中心に考えていたんですけど、30代は人生プランを考えようと思って。

水野なるほど。

関取だから、活動をセーブするとか、そういったことも全くないのですが、音楽との向き合い方も含めて人生を考えようと。だからこそ、29歳のうちにやれることはやって、サウンドも全部試して。これは誰にも言っていなかったんですけど(笑)。

水野(笑)

関取得意ジャンルばかりをやっていたら30歳手前で飽きるなと思っていましたし、いろんなことに挑戦していたとしても自分の性格的にもずっとは続かないので、どこかで燃えつきてしまったり、電池切れになるなと思って。そのタイミングが30歳くらいで来るような予感があって…なんの根拠もないんですけど。

水野なにかエンジンをかけるものを見つけたいというような?

関取そうなんですよ!それがないとやらないので。

水野音楽はすごく大事だけど、音楽に限らずもっと広いジャンルで、大きく言うと「どう生きるか」というようなことを意識するようになったんですかね?

関取書きもののお仕事ひとつをとっても、音楽が真ん中にあって、その音楽をたくさん聴いてもらうための導線のひとつとしてやっていたんですね。

水野はい。

関取でも、HIROBAの連載や新聞の連載をやらせていただくうちに、そこでしか得られないことがたくさんあるなと気づいたんですね。

水野はい、わかります。

関取いつか本を出したいなという夢もずっとあって。例えば自分が紅白歌合戦に出てめっちゃ売れたとして、どこの本屋さんでも「紅白出場で話題の関取花のエッセイがついに!」みたいなポップが言わずとも付くような時期に出したほうが部数的にも伸びるとは思うんですけど、果たしてどうなのかと…。

水野はいはい。

関取音楽が成功しないと他のことに手を出してはいけないという発想がずっとあったんですけど、それは違うかもと思うようになって。

水野うーん、面白いですね。僕は34歳くらいで、それがきましたね(笑)。

関取わ!本当ですか?

水野きましたね〜。

関取水野さんが34歳のときはどんな時期だったんですか?

水野結婚と、デビュー10周年がやってくる頃ですね。

関取ああ。

水野この仕事をしていると「もし音楽をやっていなかったら、何をしていたと思いますか?」といったことをよく聞かれるじゃないですか。

関取聞かれますよね〜。

水野まぁ、ラジオなどでは盛り上がるように面白く答えたりはしますけど。

関取そうですよね。

水野でも、そういう問いは無意味だなと思うようになって。

関取はい。

水野自分は音楽で食べていけるようになって、周りには真剣に向き合っている人ばかりで。そうなると「もし、こうだったら」と考えること自体が失礼だし、頑張っていかなきゃと。

関取ああ。

水野ただ、ある時期に「自分は音楽じゃなかったかも」と思って、生きることを広げなきゃと考えた瞬間があったんですよね。それこそHIROBAにもつながっていくんですけど。

関取はい。

水野そのときの感覚に近いのかなと思いました。例えばラジオで話したりとか、音楽以外のことも楽しいんですよね?もちろんラジオ番組も関取さんの存在を知ってもらう、ある種プロモーションという観点で大事なものだと思うんですけど、その観点を除いてもリスナーとの距離感であったり、番組で何を話すか考えることであったりが、関取さんが活動する上で重要というか。

関取そうですね。プロモーション感がいい意味でなくなってきて。もちろん、音楽があるからこそ、そのお仕事をいただいているということはありますが、前作を経てちょっと肩の力が抜けたのかもしれないですね。

水野ああ、なるほど。

(つづきます)

関取花(せきとり・はな)
愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けているミュージシャン。
NHK「みんなのうた」への楽曲書き下ろしやフジロック等多くの夏フェス出演、初のホールワンマンライブの成功を経て、
2019年5月にユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。
ちなみに歌っている時以外は、寝るか食べるか飲んでるか、らしい。
関取花オフィシャルサイト

<最新情報>
ラジオ番組「ねるまえのまえ」(TOKYO FM)の
水曜日・木曜日のパーソナリティを担当。
毎週20:00~21:30放送。

3月4日にミニアルバム「きっと私を待っている」を発売!

バンド編成による「春の五線譜ツアー」決定!
4月4日の北海道を皮切りに全国9都市9公演を敢行。

Photo/Kayoko Yamamoto
Text/Go Tatsuwa

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