2020.3.5
TALK

水野良樹×関取花 Part 2
「自分を語ろう」ではない作詞家モードで書けるようになった

毎月の連載で言葉にできないほどお世話になっている関取花さんが
3月4日にミニアルバム『きっと私を待っている』をリリース。
「これは絶対にお話を伺わねば!」ということでHIROBAでは初となる対談が実現。
話を進めるうちに、次から次へと共通点が出てきて…。

Part 2 「自分を語ろう」ではない作詞家モードで書けるようになった

関取「自分には音楽しかない!」と思い詰めて曲が書けなくなったときに、音楽を仕事にする前に聴いていたTOKIOとRAG FAIRとW-inds.と浜崎あゆみさんが入ったMDを実家に帰ったときに見つけて。

水野ハハハ(笑)。

関取「花 CDミックス」っていうタイトルで。

水野いやぁ、かわいらしいですね。

関取当時は「聴かなきゃ」っていうテンションじゃなく、もっとライトな感じで聴いていて。

水野そうですよね。

関取でも、そのころに初めてギターを持ってつくった曲でも、ちゃんといいし、ちゃんと詩的だし、メロディもよくて、決して今聴いて黒歴史と思うようなものはないんですよね。

水野はい。

関取いろんなことに囚われすぎていたなと思う部分はありますね。

水野なるほどね。

関取それもあって今回はバンドサウンドにしたんですよね。「音楽でごはん食べていこう」と思う前に初めて聴いて「あ、いいかも!」と思ったオアシスやシガーロスといった音楽をあらためて聴き直したりもしました。

水野そうやって新しい扉を開いて葛藤しながらも、歌詞の内容であったり、自分が出ているなと感じるのは面白いですよね。自分の得意なところを前面に出す作品も大事だと思うんですけど、「自分の好き」を優先するとより自分らしさが出てくるという感じなのかなぁ。

関取私らしさと言っても「対外的にわかりやすい私」ではないんですよね。「自分を語ろう」ではない作詞家モードで書けるようになったというか。

水野おお。

関取自分に曲提供をするような感覚というか。曲提供だとわりと早く書ける傾向があって。それはきっと自分で歌わなくていいので、すごくホッとして肩の力が抜けるんです。そういう感覚で書けたので今の私がすごく出ているなと感じられるんですよね。

水野なるほど。

関取そういう意味での私らしさなので、もしかしたら過去の作品を聴いてくださっている方からすると「どこが花ちゃんらしいの?」「自分の葛藤を歌うのが花ちゃんでしょ」ってなるかもしれないですね。

水野そうですね。

関取でも…そんなに自分を語れることもないので。

水野(笑)

関取無理して出す必要はないし、また今度書けるときに出せばいいなと。

水野相手が見ているものとこちらが思っているものが違うときがありますからね。

関取そうですね。

水野広げていったものが今後さらに循環していくんだろうなという期待がありますね。

関取そんな気もしますね。「頑張ってみたけど…やっぱり無理だった」って曲ができても面白いですよね。

水野無理ってことはないでしょ(笑)。

関取でも、なんか疲れちゃったみたいな。学校とか会社で元気に振る舞っている人が聴いたときに「そうだよね」って涙する音楽になるかもしれないですし。そう考えると、もしかしたら社会経験のひとつというか…。

水野真面目なんですね(笑)。

関取でも、この仕事をしているといわゆる上司や同僚もいないじゃないですか。

水野いや、ほんとに。

関取経験できないじゃないですか。お局様が…とか、後輩のエンターキーを押す音がうるさいとか。

水野その通り。

関取でも、私たちの音楽を聴いてくださっているのは、そういう環境で日々揉まれている方々じゃないですか。

水野そうなんですよ!大学の友達に久しぶりに会って、ひとつの仕事をするのにハンコを10個くらいもらわないといけないって聞いて。

関取うわ!

水野「大変だねぇ」みたいな。一般社会という言い方も変ですけど、会社勤めをされている方々が聴いてくださるんですもんね。

関取そこに届けられるアプローチはしたいと思っています。

水野考え方としてはすごく真っ当ですよね。聴いてくださる方々について、よく知ろうとしているということですもんね。

関取はい。

水野どうしても音楽の世界って浮世離れを求めるような雰囲気もあるじゃないですか。

関取ありますよね(笑)。

水野ちょっと違う部分も、もちろん大事だけど。作品に落とし込むときに、世の中の人がどんなことを感じているのかをわかっている必要はあって。

関取そうですよね。

水野例えば満員電車の空間で感じることであるとか。

関取そうですよね。私も同じことを思って、この前あえて朝のラッシュの時間に乗ったんですよ。経験したことのない空気感で…朝からお酒臭い人、張り切って香水付けたのかなという人、いろんな匂いが入り混じって。

水野(笑)

関取あとはお昼時にオフィス街のランチを食べに行ってみたり。どんな会話をしているんだろうと。

水野みんな首からパスをぶら下げて。

関取そうなんです。みんな食べるのが早くて。

水野早いですよね。

関取仕事の話をしている人もいれば、家族の話をしている人もいて。この感じを知らないまま「みんなに聴いてほしい」って言いながら音楽はしたくないし、できないなと思って。

水野いやぁ、まったく同感ですね。でも…自分にはわからないだろうなとも思うし。

関取本当のところはわからないですよね。

水野そうなんですよね。

関取水野さんは楽曲制作もたくさん依頼されるじゃないですか。

水野はい。

関取そのテーマ設定はある程度決まっていてオファーされるものですか?

水野いろいろですね。具体的にリクエストされる場合もあれば、僕が曲をつくること自体が企画のひとつで自由につくってくださいということもありますね。

関取そうなんですね。

水野でも、その出口というか、誰が歌うのかによって景色が違う気がします。

関取そうですよね。

水野例えば男性アイドルであれば、恋愛の曲を歌うにしてもファンの方々との疑似恋愛というか、そのアイドルを思い浮かべて聴けるようなものであったりとか。

関取ああ、なるほど。私は関取花の名前で曲を出しているから、自分が街で見たいろんな人の話を書けたりするんですけど、水野さんくらい幅広く書かれていると…。

水野いやいや。

関取どうしてネタが尽きないのかなと。

水野ネタ、ないない。全然ない!スッカラカン(笑)。

関取(笑)

水野でも…街を歩いていたほうがいいですよね。

関取いやぁ、そうですよね。

水野あとは、主人公が浮かんできて勝手に動き出すというか。その主人公の気持ちが歌になっていくような。

関取そこに入っちゃうと楽ですよね。早く書けるというか。

水野あれは…なんなんでしょうね。

関取でも、「このメロディすっごくいい!これだ!」と思う曲ほど、力が入っちゃうのか歌詞が書けないんですよね。

水野ああ、歌詞のゾーンに入らない。

関取なぜか…。ちょっと休もうと思って、サラッとピアノで弾いた曲はすぐにできるのに、いわゆるタイトル曲を書こうと思うとダメなんですよね。

水野そうなんですね。街に出るのも大事だけど、普通に生きているのが一番いいなと最近すごく思いますね。息子を見ているといろいろな驚きがあって、いろんな感情のベクトルが見えると書きやすいんですけどね。感情のベクトルがまったく見えないと、ただ書いているだけになってしまって難しいんですよね。

関取そうですよね。

(つづきます)

関取花(せきとり・はな)
愛嬌たっぷりの人柄と伸びやかな声、そして心に響く楽曲を武器に歌い続けているミュージシャン。
NHK「みんなのうた」への楽曲書き下ろしやフジロック等多くの夏フェス出演、初のホールワンマンライブの成功を経て、
2019年5月にユニバーサルシグマよりメジャーデビュー。
ちなみに歌っている時以外は、寝るか食べるか飲んでるか、らしい。
関取花オフィシャルサイト

<最新情報>
ラジオ番組「ねるまえのまえ」(TOKYO FM)の
水曜日・木曜日のパーソナリティを担当。
毎週20:00~21:30放送。

3月4日にミニアルバム「きっと私を待っている」を発売!

バンド編成による「春の五線譜ツアー」決定!
4月4日の北海道を皮切りに全国9都市9公演を敢行。

Photo/Kayoko Yamamoto
Text/Go Tatsuwa

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