2020.5.12
TALK

水野良樹×上白石萌音 Part 2
理論ではなく感情

上白石萌音さんが歌う「夜明けをくちずさめたら」。
「NHK みんなのうた」から楽曲制作の依頼をいただき、
「いつか自分が書いた曲を上白石さんに歌ってほしい」という念願が叶いました。

一言一言に説得力がある上白石さんの歌声。
その理由が知りたくて、表現者としての上白石萌音さんの思いを聞かせていただきました。

Part 2 理論ではなく感情

水野お芝居のときは、目の前で先輩方の名演を見て「すごい!」と思うと同時に、次のセリフを言わなきゃいけないじゃないですか。

上白石はい。

水野そのときは、見ている自分、演じている自分というように、いくつかの視点があるんですか?

上白石あるべきだと言われますね。俯瞰した目を持ったほうがいいと。

水野やっぱりそうなんですね。

上白石でも、すごく難しいですね。どうしても役に没入してしまいがちで…でも独り善がりになってはいけないですよね。

水野はい。

上白石お芝居とは「会話」で、「空気のなかにいるもの」なので。その空気を上から見る目を持っていなさいと教わりましたが…。

水野難しいですよね。矛盾してますもんね。

上白石どういうこと?って感じになりますよね(笑)。

水野そうですよね。自分が演じる人物の状況に没入しますよね。だけどそれを客観的に見ている。

上白石はい。

水野2つの人格がないといけない。

上白石特に舞台はそうですね。やっぱり舞台は空間なので。いちばん後ろの席の人にもわからないといけないですから、自分の近くだけで完結してはいけない。ちゃんと放出しないといけない難しさがあります。

水野そうか。

上白石それを叶えるのは理論ではなく感情なんですよね。

水野感覚的なものですか?

上白石私もまだよくわかってはいないんですが…役者の感情がお客さんにも伝わるというか。芝居の大きな魅力ですね。

水野舞台だとお客さんの反応が目の前で見られるじゃないですか。

上白石はい。

水野お客さんの反応を見て、芝居は変わっていくものですか?

上白石変わります。笑いの量、シーンとしているときの空気感、クライマックスのすすり泣き、そういった全てを敏感に感じ取っちゃいます。

水野ああ、そうなんですね。

上白石「何があってもブレずにやりなさい」という人、「毎日違うものでいいんだよ」という人、演出家さんによって考え方は違いますね。

水野面白いなあ。

上白石でも、絶対に毎日同じようにはならないので。ライブもそうですよね。

水野そうですね。全然違いますね。

上白石そこも楽しさのひとつですよね。

水野難しいですね。いきものがかりでは、僕が曲を書いて吉岡が歌う。お芝居でいうと、セリフ書く人と演じている人が違うというか。

上白石はい。

水野音楽の世界だとシンガーソングライターのように、曲を書いている人と歌っている人が同じということが多いですよね。

上白石そうですね。

水野曲を褒めていただくときに、僕は「つくった歌そのものがいい」と言われたい。逆に吉岡は「歌い手による表現がいい」と言われたい。その緊張感が大事だと思っています。

上白石なるほど。

水野上白石さんは、どこで評価されたいですか?

上白石私は作品ですね。

水野ああ、そうなんですね。素晴らしい。

上白石逆に目立ちたくないです。この作品のなかで自分にはどんな役割があって、どういう働きをすればいいんだろうと考えます。まさに歯車ですよね。

水野はい。

上白石作品は監督のものなので、自分はひとつの駒でしかないです。

水野すごい。

上白石でも、初めて作品を見るときは全然冷静になれなくて。自分の芝居ばかりに目がいってしまって「もっとこうすればよかった」とか。

水野反省というか。

上白石はい。なので作品を純粋に見られたことは一度もないです。

水野難しいんですね。

上白石演じるときは、作品が全てで自分は二の次ですね。

水野でも、全く自我がない状態だとお芝居はできないですよね?

上白石そうですね。女優の富司純子さんに頂いた印象的な言葉があるんです。「表現者は常に真っ白な服を着て、監督によってその人の色に染まりなさい」。作品が終わるたびに洗濯して真っ白に戻って、次の作品でまた違う色に染まっていくという仕事だと。「ああ、自我じゃないんだ」とそのときに思いましたね。流れに身をまかせて漂うように、どこまでその色に染まることができるかが大事なんですよね。

水野なるほど、受け入れるというか。

上白石俳優さん、女優さんはキラキラしていてスターというイメージですが、そうではない人もいるんだとその言葉で気づかせていただいて。私もそういう役者になりたいと思ったんです。

水野自我は僕も興味があるというかテーマとして考えているくらいで。いきものがかりも作品がすべてという考え方で楽曲至上主義的な部分があって、吉岡は自分の色が出ないように、聴いた人の解釈が広がるように、気をつけて歌ってくれています。

上白石なるほど。

水野HIROBAの対談でも「気をつけて歌ってきたけど、私を通して歌うといきものがかりになるんだよね」と言っていて。僕もその通りだと思っています。
※参照 HIROBA TALK 水野良樹×吉岡聖恵 
Part 1 人生で初めて「これが…“あうん”か」って

上白石ああ、そうですよね。

水野上白石さんが役者として真っ白でいようと努力をしながら、上白石さんを通るからこそ出てくるセリフや表現がきっとあるんだろうなと。自我とその人にしか表現できないものの、いい塩梅が…。

上白石そうですよね。役をいただく時点で、「この役者さんのこの役が見たい」と思っていただいているんですよね。だから、求められてはいるはずですよね。

水野そうですよね。

上白石自分を出そうと思わなくても出ちゃうものなので。

水野ああ、そうかもしれないですね。

上白石出そうと思わず、「出ちゃったものはしょうがない」くらいの気持ちのほうがいいのかなと思っています。自分らしさを消そうとする必要はないですしね。

水野なるほど。

(つづきます)

上白石萌音(かみしらいし・もね)
1998年生まれ。女優・歌手。
2011年にデビューして以降、映画、ドラマ、舞台を中心に幅広く活躍。
2020年1月から放送されたドラマ「恋はつづくよどこまでも」が大ヒットし、
“恋つづ”ブームを巻き起こした。
5月11日に配信シングル「夜明けをくちずさめたら」をリリース。
この楽曲はNHKみんなのうた 4月〜5月にて放送中。
同曲が主題歌の日生劇場ファミリーフェスティヴァル
2020 NHKみんなのうたミュージカル「リトル・ゾンビガール」
が7月17日から上演予定。

上白石萌音オフィシャルサイト
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Instagram

Photo/Manabu Numata
Text/ Go Tatsuwa
Hair & Make/Tomoko Tominaga(allure)
Styling/Takashi Shimaoka(Office Shimarl)

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